ビジネスシーンや日常生活で使用する「ワークフロー」という言葉は、大正時代の頃にアメリカで発祥したビジネス用語です。本記事ではワークフローの意味や歴史などを現役フリーアナウンサーの新保友映が解説します。ワークフローのメリット・デメリットや注意点などについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
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<目次>
・「ワークフロー」ってどんな意味?
・ワークフローシステムを導入するメリット
・ワークフローシステムを導入するデメリット
・ワークフローシステムの選び方とポイント
・ワークフローシステムを導入した企業の事例
・まとめ
「ワークフロー」ってどんな意味?
「ワークフロー」の意味をひとことで言うと「仕事の流れ」です。ワークフローは「Work(仕事)」と「Flow(流れ)」の英単語を組み合わせたものになっています。ワークフローとは、業務を効率的に行うため「誰が、どのような手順で進めるか」という流れを定めたものです。業務の進め方だけでなく、プロセスや管理方法を可視化したものを総称して、ワークフローと呼ぶこともあります。
・ワークフローの歴史
1920年前後からワークフローという言葉が使われるようになりました。アメリカのフレデリック・ウィンズロー・テイラーと、ヘンリー・ガントがワークフローの概念を作ったといわれています。※フレデリック・ウィンズロー・テイラーは「科学的管理法の父」であり、ヘンリー・ガントは「ガント・チャートの生みの親」として有名です。
1980年代頃には大規模な製造産業が増え、業務進行においてワークフローの概念はより欠かせないものになりました。管理すべき業務が増えたことで、ワークフローの構築が複雑化してきたのもこの頃です。
2010年以降のワークフローは、主にデジタルシステムによって管理されるようになりました。例えば、紙で管理していた書類をクラウド化して、決裁や承認の流れを整える企業が増えました。
・ワークフローシステムとは?
「ワークフローシステム」とは、ワークフローを効率的に進めるために使われる電子システムのことです。ワークフローシステムでできることは「稟議(りんぎ)」「決裁」「申請」など、多岐にわたります。「クラウド型」と「オンプレミス型」に分かれており、多くの企業で導入されています。※クラウド型はインターネットに接続して使用するシステムで、オンプレミス型は自社にサーバを構築し社内で完結させる仕組みのことです。
ワークフローシステムを導入するメリット
ここでは、企業がワークフローシステムを導入するメリットを4点紹介します。・働き方改革
ワークフローシステムを導入することで、リモートワークが行いやすくなります。さまざま書類をクラウド上などで共有できるため、パソコンがあればどこからでもアクセスできます。出社しなくても業務が行えるようになることで、働き方改革にも一役かってくれるでしょう。
・決裁にかかる時間の短縮
紙に印刷した書類の場合、決裁(押印)をもらうためには「係長→課長→部長」といった形で、手作業で回していかなければなりませんでした。ワークフローシステムを導入することで各自のパソコンから確認や押印ができるため、決裁までの時間が短縮できるようになります。
・ペーパーレス化
ワークフローシステムによって書類を電子化することで、紙の削減ができます。ペーパーレス化は、コストだけでなく管理の楽さもメリットといえるでしょう。
・内部統制の強化
内部統制を強化するために、ワークフローシステムの導入は有効だといえます。目標達成や事業拡大など、さまざまなミッションに挑戦するにはルール整備が必要だからです。なお、金融庁が提示する内部統制の目的は、以下の4項目です。
(1)業務の有効性および効率性
(2)財務報告の信頼性
(3)事業活動に係る法令の遵守
(4)資産の保全
ワークフローシステムを導入するデメリット
ワークフローシステムを導入するデメリットは、導入時にかかるコストや、新しい機械に慣れなくてはならないという心理的なハードルが生じることです。システムの操作方法が難しかったり、既存のやり方とあまりにも異なったりする場合、従業員が戸惑ってしまうかもしれません。導入前にシミュレーションを行い、スムーズに移行できるよう準備しておくことが大切です。ワークフローシステムの選び方とポイント
自社に合うワークフローシステムを選ぶ際のポイントを紹介します。(1)従業員が操作しやすいシステムである
(2)業務に必要な各種フォーマットが備わっている
(3)複雑なプロセスをデジタル化できる
(4)任意の承認ルートを設定できる
(5)自社のほかのシステムと連携できる
(6)メンテナンスに手間がかかりすぎない
(7)適切なコストで使用できる
ワークフローシステムを導入する際は、これらの項目をチェックしてみてください。システムの種類は多数あるため、比べるのが大変ですが、できるだけ理想に近い製品を探しましょう。ワークフローシステムの入れ替えは非常に大変なため、よく精査してから決めることが重要です。
ワークフローシステムを導入した企業の事例
ここでは、実際に存在する企業においてワークフローシステムを導入し成功した例を紹介します。・承認申請業務のペーパーレス化
金融系企業のA社では、ワークフローの導入によって、ペーパーレス化を実現しました。過去にもワークフローシステムを導入していたものの、使い勝手の悪さから結局、紙媒体を選ぶ従業員が多かったそうです。操作性の高いシステムに変えることで、従業員がスムーズにデジタル化に移行でき、承認や申請にかかる時間を大幅にカットできました。
・申請業務のデジタル化
化学メーカーのB社では、15段階にも及ぶ稟議(りんぎ)のデジタル化に成功しました。従来は紙の稟議書を社内便でわざわざ回覧していましたが、確認の遅れや資料の紛失などのトラブルが発生することがしばしばあったそうです。これらを解決するために、社内のワークフローシステムの整備に取り組み、結果として大幅な業務スピードアップに成功しました。
まとめ
「ワークフロー」は組織作りに必要な概念であり、最終的には事業の売上にも影響を与えます。ワークフローやワークフローシステムの使い方を知っておくと、仕事で役立つシーンがあるでしょう。ワークフローの導入前には、他社の事例や注意点なども確認し、自社に合う進め方で行うことがおすすめです。■執筆者プロフィール 新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。