「他人に迷惑をかける存在」に厳しい日本人
家に上がる際には必ず靴を脱ぎ、食前にはおしぼりで手を拭き、神社仏閣に詣でる前には手と口を清めます。
かたやヨーロッパの人々は、家の中に土足で入る行為にさほど抵抗を示しませんし、レストランでは手も洗わずにパンをちぎって口に入れます。雨が降っても傘をささずにびしょ濡れで闊歩(かっぽ)する人も大勢おり、日本人に比べると不潔さに対する嫌悪感が少ないことはよく感じます。
加えて、ともすれば公園で遊びまわる子どもやベビーカー連れの母親ですら「他人に迷惑をかける存在」として認識されうる現代日本では、ペットの客室同伴は前途多難に思えます。
動物好きの1人としては、ペットたちがこの人間優先社会でもなるべく幸せに生きていく方法を模索しほしいところですし、他方で「人に迷惑をかけるのは最大のタブー」として教育されてきた日本人が、いきなりアイデンティティの拠り所を根本から揺るがすような議論をされて戸惑うのも納得できます。
誰もが満足できる解決法を見つけるのはすぐには困難かもしれませんが、議論を重ねることで状況が良い方向に前進していくことを望みます。
最後に、炎上するJAL機からの脱出に尽力した乗客乗員に賛辞を贈るとともに、この事故で命を落とした海上保安庁機の乗務員およびJAL機のペット2匹に哀悼の意を表します。
この記事の筆者:ライジンガー 真樹
元CAのスイス在住ライター。日本人にとっては不可思議に映る外国人の言動や、海外から見ると実は面白い国ニッポンにフォーカスしたカルチャーショック解説を中心に執筆。All About「オーストリア」ガイド。