ビジネス上で使われる「KPI」という言葉。耳にしたことはあるけど何のことかよく分からない、という人もいるのではないでしょうか。KGI、KFSなど似た言葉もあり、混乱してしまうことも多いかもしれません。
ビジネスではどんなシーンでどのように使うのか、具体的な事例を交えて詳しく解説します。
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<目次>
・KPI(ケーピーアイ)の意味とは
・KPIを設定する目的
・KPI導入のメリット
・KPI設定の手順
・業界別のKPIの具体例
・KPI設定で重要な「SMARTの法則」とは
・まとめ
KPI(ケーピーアイ)の意味とは
KPI(ケー・ピー・アイ)とは、以下の英文の頭文字のことです。【K】Key(キー)
【P】Performance(パフォーマンス)
【I】Indicator(インジケーター)
日本語に訳した場合は「重要業績評価指標」または「重要達成度指標」となります。
・KPIの定義
KPIは、あらかじめ定めた目標に対して、どの程度達成したのかを表す指標のことです。「スタート→ゴール」の2つの観点だけでなく、その経過(プロセス)においての評価基準を決めるために用います。KPI分析を行うことで、目標達成までの道筋が分かりやすくなったり、軌道修正しやすくなったりする点がメリットです。Webマーケティングやシステム開発、製造業の現場など多くのシーンで活用されています。・KPIとKGIとの違い
KPIがプロセスに対する指標であるのに対して、KGIはゴールを表す数値です。KGIは以下の頭文字を略したものです。【K】Key(キー)
【G】Goal(ゴール)
【I】Indicator(インジケーター)
日本語では「重要目標達成指標」となり、ゴール(最終目標地点)となる数値を可視化したものです。多くの場合、1~5年程度の長期的な数値設定となります。
・KPIとKSFとの違い
KSFは、KPI指数のうちの1つで、以下の頭文字を略したものです。【K】Key(キー)
【S】Success (サクセス)
【F】Factor(ファクター)
目標達成のために必要な状態や条件のことで、日本語に訳すと「重要成功要因」となります。例えば、KGIとして30%のコストカットをあげた場合、そのための業務効率化の施策がKSFです。
・KPIとOKRとの違い
OKRは以下の頭文字の略で「目標達成」と「主要な結果」を測るための指標です。【O】Objective (オブジェクティブ)
【K】Key(キー)
【R】Result(リザルト)
OKRは、組織目標の管理を企業全体で共有するために用いられます。OKRはあえて理想を高くした数値にし、6~7割程度の達成率を目指すことが多くあります。一方、KPIはゴールまでの中間目標の1つとして設定し、100%達成を目指します。
KPIは、数値の可視化によって目標達成までの進捗(しんちょく)状況を確認することが主な目的です。OKRでも数値の観測は行いますが、達成度の高さよりも目標に向かって取り組む雰囲気作りや、チームワークの強化などがより重要視されます。
KPIを設定する目的
KPIを設定する主な目的は以下の3点です。・行動を明確化するため
KPIを設定することで、目標達成までの行動を明確化できます。ゴールまでの道筋が把握できておらず、ぼんやりとしたイメージしか持っていないと何から着手すれば良いのか迷ってしまうかもしれません。中間地点までの日数や数値を定めることで、なにから優先して行うべきか判断しやすくなります。・目標達成プロセスを可視化するため
目標達成だけでなく、その過程を可視化しておくことも重要です。目標達成に向けて行った行動や施策、取り組み方などを記録しておきましょう。これらのプロセスは、別のプロジェクトにおいても役立つ重要な情報になります。・組織全体のスキルアップを図るため
目標達成までの進捗(しんちょく)状況を常に把握しておくことで、組織や個々のスキルアップにつながります。「いつでも良い」という考え方ではなく「KPI達成のために〇〇日までに行動する」という状態を作ると効果的です。KPI導入のメリット
KPI導入のメリットとして、以下の6項目について把握しておきましょう。・メリット(1)組織内評価の基準が統一される
KPIによって具体的な数値を表すことで、社内の評価基準が明確になります。例えば、KPIを「アポイントメント数30件」と決めた場合、各従業員がどの程度目標に近づけたのかを数値面で公平に判断できます。数値化できないものの場合は、上司が部下の成果を正確に判断することは難しいでしょう。・メリット(2)社員個人の目標が明確になる
ゴール地点の目標しかない場合、達成までの道のりが長すぎて行動をイメージしにくいケースがあります。KPIの導入によって、近い目標を意識することで、チームや個人単位で行うべきことが把握しやすくなります。・メリット(3)組織全体のモチベーションが上がりやすい
KPIを設定することで、長期的なプロジェクトにおいてもモチベーションを維持しやすくなるでしょう。進捗(しんちょく)を確認することで軌道修正も行えるようになるので、目標達成を実現しやすくなります。・メリット(4)目標達成のプロセスが可視化される
KPIの設定によって、ゴールまでのプロセスが可視化できる点もメリットです。例えば「初期で〇〇%の達成→中期で〇〇%の達成」など、行動してきた内容が具体的になります。これらを細分化し検証することで、どのような施策がマッチしているのか判断しやすくなるでしょう。・メリット(5)組織全体のパフォーマンスが向上する
PDCAサイクルを回すためには、KPIの設定が欠かせません。行動や検証を繰り返すために、正確な数値の測定は非常に重要です。こまめに目標を再確認することで、間違ったルートに進むことを避けられます。・メリット(6)戦略と日常業務の整合性が高まる
KPIの導入時には、目標達成のためのKSF(重要成功要因)を設定します。達成のために必要な計画や戦略を考えることは、企業全体の利益アップにもつながる可能性があるでしょう。KPIを設定することで、日常業務1つにおいても「何のための行動か」という点を意識しながら取り組めるようになります。KPI設定の手順
KPIの設定は、以下の4ステップで行います。・手順(1)KGIを設定する
KPIの設定の際には、まず「KGI(重要目標達成指標)」を決めます。ゴールが定まっていなければ道筋を決めることも難しいため、最初に設定しましょう。・手順(2)KSFを洗い出す
次にKSF(重要成功要因)を洗い出します。ゴールに向けて必要な要因を洗い出し、そのための環境を整えます。・手順(3)KPIを設定する
ゴールと達成のための条件(環境)を確認できたら、最終地点に向けたプロセスを設定します。KPIの設定は、企業や業務に応じて自由に決めて問題ありません。一例としてはアポイントメント数や資料ダウンロードの数、面談数など多岐にわたります。・手順(4)KPIツリーを作成する
KPIツリーとは、スタートからゴールまでの全体像を表した表のことです。形式はどのようなものでも良いので、自分が分かりやすい図やメモなどに書き出してみてください。KPIツリーを作成しておくことで、他者との共有もスムーズに行えるようになります。業界別のKPIの具体例
ここでは業界別のKPI設定の具体例を紹介します。・具体例(1)営業の場合
営業におけるKPIは以下のような項目を使用するケースが代表的です。企業全体の売上アップを最終目標としている場合、このゴールに対してどのようなアプローチで達成するかを考える必要があります。成約の前段階でのアクション1つずつについても、数値化しておくとよいでしょう。・アポイントメント数
・新規顧客獲得数
・顧客単価
・リードタイム
・成約率
・具体例(2)システム開発の場合
システム開発における重要なKPIは以下のとおりです。システム開発においては、納期の管理が特に重要視されます。ただし、納期にとらわれすぎてバグを見逃してしまわないように、チェックを怠らないことも大切です。プロジェクトをスムーズに進行させるためには適切なKPIの設定が欠かせません。・プロジェクト進捗(しんちょく)率
・コード品質
・エラー発見/修正率
・具体例(3)人事の場合
人事においてもKPIの導入はメリットがあります。以下は主に「採用」におけるKPIの例です。それぞれのフェーズにおける指標を作成し、可視化しておくと良いでしょう。この他にも、人材育成のKPIとして研修への参加数を把握したり、労務管理においては平均残業数を洗い出したりする際にも活用できます。・応募者数
・選考通過率
・採用コスト
・在職日数
・具体例(4)製造業の場合
製造業でよく利用されるKPIには以下のようなものがあります。製造業におけるKPIは、企業の利益率に直結する重要な指標です。無駄をなくし業務効率化を図るために、さまざまな角度から数値化をしておく必要があるでしょう。・原価率
・設備稼働率
・不良品の数
・生産性
・具体例(5)マーケティングの場合
マーケティングにおいては、非常に多くのシーンでKPIが設定されます。以下は一例として、BtoB施策におけるKPIの設定イメージを紹介します。一方、BtoC向けのマーケティングにおいては「自社サイトへの会員登録数」「メルマガからの問い合わせ数」などをKPIとして設定することもあります。業態や販売する商品、目的によって最適なKPIを設定することが肝心です。【BtoB向けに販売している商品の説明会を行った際に観測すべきKPI】
・説明会への申し込み数
・説明会参加後の商談率