ダイバーシティの意味とは? インクルージョンとの違いや推進方法、企業事例を解説

「ダイバーシティ」とは、多様性を意味する用語ですが、本当の意味や効果的な推進方法は十分理解されていないことが多いです。ダイバーシティの意味、インクルージョンとの違い、推進方法を企業事例を交えて現役フリーアナウンサーの阿部佳乃が解説します。

ダイバーシティの意味とは? インクルージョンとの違いや推進方法、企業事例を解説
ダイバーシティの意味とは? インクルージョンとの違いや推進方法、企業事例を解説

「ダイバーシティ」とは、多様性を意味する用語です。ビジネス界では、これが重要なキーワードとなっています。しかし、本当の意味や効果的な推進方法は十分理解されていないことが多いです。

この記事では、ダイバーシティの意味、インクルージョンとの違い、推進方法を企業事例を交えて現役フリーアナウンサーで日本語教師の阿部佳乃が解説します。

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<目次>
ダイバーシティの意味とは
ダイバーシティの種類
ダイバーシティを用いたビジネス用語
ダイバーシティが重視される背景
ダイバーシティ経営のメリット
ダイバーシティの課題
ダイバーシティ経営の企業事例
ダイバーシティを推進するには?
まとめ

ダイバーシティの意味とは

「ダイバーシティ」とは、多様性を指す英語の「diversity」に由来し、職場や社会でのさまざまな背景、特性、観点を持つ人々の存在と、それらの違いを認識し尊重する文化や価値観を意味する用語です。

・英単語の「diversity」の意味・発音・読み方
英語の「diversity」は、人種や性別、年齢、文化、宗教などの多様な要素を含む「多様性」を意味します。発音は「デヴァースィティ」です。

・日本語での「ダイバーシティ」の意味
日本語での「ダイバーシティ」は、多様性を単に認めるだけでなく、それを通じて各個人の能力や特性を最大限に生かすことを指します。ビジネスにおいては、多様な人材の活用を通じて新しいアイデアや解決策を生み出すための重要な概念です。

・ダイバーシティ2.0とは
ダイバーシティ2.0は、従業員の多様な属性を生かし、個々の能力を最大限に引き出して企業成長を促す経営戦略です。経済産業省が策定した行動ガイドラインには、下記の7つのアクションが含まれています。

(1)推進体制の構築
(2)ガバナンスの改革
(3)管理職の行動・意識改革
(4)従業員の行動・意識改革
(5)全社的な環境・ルールの整備
(6)労働市場・資本市場への情報開示と対話
(7)経営戦略への組み込み(トップマネジメントのコミットメント)

PwCの調査によると、多くのCEOがダイバーシティ経営のメリットを認識しており、ダイバーシティ2.0は企業の持続的な成功に必要不可欠な要素です。このアプローチは、多様性を受け入れ、個性や能力を尊重し活用する企業文化の構築を目指します。

・ダイバーシティとインクルージョンの違い
「ダイバーシティ」は多様な人々の存在を、一方「インクルージョン」はこれらの人々が実際に参加し、尊重され、意見が聞かれる環境を指す用語です。簡単に言うと、ダイバーシティは多様性を「集める」ことに重点を置き、インクルージョンは「どのように生かすか」に焦点を当てています。

ダイバーシティの種類

ダイバーシティは、単に異なる特徴を持つ人々の集まりを指すだけでなく、それぞれの個性や背景がもたらす価値の広がりを意味する用語です。このコンセプトは主に、表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティの2つの側面があります。

・表層的ダイバーシティ
表層的ダイバーシティは、人々の見た目や、すぐに知覚できる特徴に焦点を当てたものです。これには性別や年齢、人種、身体的特徴などが含まれます。これらの特徴は個人がコントロールできない側面であり、最初の印象や人々の間の即時の相互作用に影響を与えます。企業や組織が表層的ダイバーシティを重視することは、さまざまな背景を持つ人々が参加し、貢献する機会を平等に提供する第一歩です。

・深層的ダイバーシティ
深層的ダイバーシティは、個人の価値観や信念、経験、知識など、表面的には見えにくい側面に焦点を当てたものです。これには教育背景や職業経歴、社会的ステータス、宗教的信条、文化的な視点などが含まれます。深層的ダイバーシティは、より豊かな議論を促進し、革新的なアイデアや解決策を生み出す可能性を秘めています。企業や組織において深層的ダイバーシティを認識して活用することは、包括的で生産的な職場環境を築く上で重要です。

ダイバーシティを用いたビジネス用語

ダイバーシティを取り入れたビジネス用語は、企業が多様性を組織内でどのように理解し、活用しているかを示すものです。ここでは、ダイバーシティインクルージョン、ダイバーシティマネジメント、そしてダイバーシティ経営という3つの重要な概念について解説します。

・ダイバーシティインクルージョンとは
「ダイバーシティインクルージョン」は、企業が多様な背景を持つ人材を受け入れ、それぞれの個性や能力が尊重され、活用される文化を作ることを指す用語です。この概念は、単に多様性を持つ従業員を雇用するだけでなく、それらの従業員が組織内で完全に参加し、貢献することを可能にする環境を提供することを強調します。ダイバーシティインクルージョンの実践には、多様な声を聞くためのプラットフォームの設置や、差別や偏見に対する研修の実施などが含まれます。

・ダイバーシティマネジメントとは
「ダイバーシティマネジメント」は、組織内の多様性を管理し、活用するための戦略的なアプローチを指す用語です。このプロセスには、多様な人材の採用や育成、評価、そして異なる視点やスキルを組織の目標達成に役立てるための方策が含まれます。ダイバーシティマネジメントは、従業員が互いの違いを理解し、尊重する文化を促進することを目指しています。

・ダイバーシティ経営とは
「ダイバーシティ経営」は、企業経営において多様性を重要な要素として組み込むことを意味する用語です。これは、企業が市場の多様性に応じて柔軟に対応する能力を高めるため、異なる文化や背景を持つ従業員の知見や経験を活用することを指します。ダイバーシティ経営は、新しいアイデアや革新的な解決策を生み出すことを促し、企業の競争力を高める効果があります。また、多様な顧客層へのアプローチや市場ニーズへの適応能力も強化します。

ダイバーシティが重視される背景

ダイバーシティが近年、ビジネス界で強調されるようになったのは、社会経済的な変化が大きな要因です。これらの変化には、労働人口の減少、企業のグローバル化、消費の多様化、そして雇用意識および価値観の多様化が含まれます。

・労働人口減少と労働人口構造の変化
多くの国で、特に先進国で見られる労働人口の減少とその構造の変化は、ダイバーシティを重視する大きな理由の1つです。少子高齢化による労働力の減少は、企業にとってさまざまなスキルや背景を持つ人材を積極的に採用し、活用する必要性を高めています。また、世代間の価値観や働き方の違いを理解し、それぞれの強みを生かすことが、企業の持続的な成長と競争力の維持に不可欠です。

・企業のグローバル化
グローバル化が進む中で、企業は異なる国や文化の市場に進出しています。これに伴い、異文化理解や多様な市場ニーズに対応するためには、多様なバックグラウンドを持つ従業員が必要です。グローバルな視点を持つ人材の確保と活用は、国際競争において企業にとって重要な戦略となっています。

・消費の多様化
消費者のニーズや好みは多様化しており、1つの商品やサービスが全ての人に受け入れられる時代は終わりました。この消費の多様化に対応するためには、企業内部にも多様な視点やアイデアが必要です。ダイバーシティの高いチームは、多様な顧客層のニーズを理解し、新たな市場機会を見つけ出す可能性が高まります。

・雇用意識・価値観の多様化
現代の労働市場では、従業員それぞれの働き方や価値観、キャリアに対する期待が多様化しています。これに対応するためには、企業はさまざまな背景を持つ人材を受け入れ、それぞれが最大限に能力を発揮できる環境を整える必要があるでしょう。ダイバーシティの尊重は、従業員の満足度とロイヤルティを高め、組織全体の生産性向上に貢献します。

ダイバーシティ経営のメリット

ダイバーシティ経営が企業にもたらすメリットは多いです。多様なバックグラウンドを持つ人材を受け入れることで、会社全体の競争力が向上し、より良い成果を生むことが期待されます。

・メリット(1)優秀な人材を採用しやすくなる
ダイバーシティ経営を推進する企業は、さまざまな人材にアクセスしやすいです。性別や年齢、国籍、障がいの有無など、多様な特性を持つ人材を積極的に受け入れることで、その企業は優秀な人材を引き寄せることが可能です。これにより、企業は多様な視点を持った人材を得ることができ、イノベーションの源泉となるでしょう。

・メリット(2)イノベーションが生まれやすくなる
多様なバックグラウンドを持つチームは、異なる視点やアイデアをもたらし、創造的な解決策を生み出す傾向があります。これらのチームは問題解決においてより柔軟で、ユニークなアプローチを取ることが可能です。ダイバーシティが豊かな環境は新しいアイデアの発想の場となり、企業にとって重要な競争力の源泉となること間違いありません。

・メリット(3)企業業績が好調になりやすい
ダイバーシティの高い企業は、従業員の満足度が高く、顧客基盤が広がりやすい傾向にあります。多様な視点を持つことで、顧客のニーズをより深く理解し、幅広い市場に対応できます。これは、結果として企業の業績向上に直結する内容です。

・メリット(4)社員の離職率が低下しやすい
ダイバーシティに富んだ職場は、従業員にとって刺激的で、働きがいのある環境を提供します。このような職場では、従業員が自分のアイデンティティを尊重され、個々の能力を発揮しやすいと感じるため、職場に対する満足度が高いです。これにより、社員の定着率が向上し、離職率の低下が期待できます。

ダイバーシティの課題

ダイバーシティを推進する上での課題は、企業の成長と持続可能性に深く関わっています。それは、多様なバックグラウンドを持つ人々を取り入れることで生じる、さまざまな問題点に直面するためです。

・課題(1)成果を評価するのが難しい
ダイバーシティの推進では、従来の評価システムではカバーしきれない多様な業務や貢献が生じます。例えば、異なる文化背景を持つ従業員がもたらす新しいアイデアやアプローチは、従来の成果評価の枠組みでは評価が難しいです。このため、評価方法の見直しや、多様性を正しく評価するための新しい基準の導入が求められます。

・課題(2)ハラスメントトラブルが起こる可能性がある
異なる文化や価値観を持つ従業員が増えることで、意図せず相手を不快にさせる行動や発言が増える可能性が高いです。言葉の使用やコミュニケーションのスタイルに関して、誤解を招くこともあるでしょう。企業は、ダイバーシティに関する教育やハラスメント防止の取り組みを強化する必要があります。

・課題(3)適切なルール設定をしなければ逆効果になる
多様性を尊重するためのルールやガイドラインが不十分だと、組織内での混乱や不公平感が生じてしまいます。例えば、柔軟な働き方を認める際に一部の従業員にのみ適用されると、他の従業員からの反発を招く恐れがあります。適切なルール設定と、それらを公平に適用することが重要です。

ダイバーシティ経営の企業事例

現代のビジネス環境において、ダイバーシティ経営は企業の持続可能な成長とイノベーションの鍵となっています。多様な背景を持つ従業員を受け入れ、その潜在能力を最大限に活用することで、企業は新たな価値を創造し、競争力を高めています。ここでは、ダイバーシティ経営を積極的に取り入れている企業の事例を見ていきましょう。

・株式会社ベネッセホールディングス:女性雇用、障がい者雇用を強化
株式会社ベネッセホールディングスは、ダイバーシティ経営の模範として注目されている企業です。女性と障がい者の雇用強化に注力しており、それぞれの能力を最大限に発揮できる環境づくりを進めています。女性のキャリアアップを支援するための研修プログラムや、障がい者を支援するための職場環境の改善など、多様な取り組みを行っています。これらの施策は、社員の働きがいと企業のパフォーマンス向上の両面で顕著な効果をもたらしており、ダイバーシティ経営の成功例として多くの企業に影響を与えている重要な存在です。

・株式会社キャスター:リモートワークを積極推進
株式会社キャスターは、リモートワークの積極的な導入によってダイバーシティを推進しています。地理的な制約を超えた働き方を可能にすることで、さまざまな背景を持つ人材を採用しやすくなりました。また、従業員のライフスタイルに合わせた柔軟な勤務体系は、ワークライフバランスの実現にも関係しており、従業員の満足度の向上につながっています。株式会社キャスターのリモートワーク推進は、新しい働き方のモデルとして、他の企業にも大きな影響を与えています。

ダイバーシティを推進するには?

ダイバーシティの推進は、企業文化の根底からの変革を要求します。この変革を実現するためには、以下の戦略が効果的です。

・目的やメリットを社員に理解してもらう
ダイバーシティを推進する目的を社員全員が理解することが重要です。これには、多様性が生み出す新しいアイデアや創造性、そしてチームワークの向上など、具体的なメリットを明確に伝えることが含まれます。また、ダイバーシティがビジネス成果にどのように貢献するかを示すことで、社員の関心と理解を深めることが可能です。

・互いの声を聞く機会を設ける
多様なバックグラウンドを持つ社員が互いの意見を尊重し、理解する文化を育てるためには、定期的なミーティングや講習会を設けることが有効です。これらの場所では、異なる視点を共有し、相互理解を深める機会を提供します。

・交流につながるIT技術・ツールを導入する
リモートワークやグローバルなチームの連携が増える中で、交流を促進するIT技術やツールの導入は不可欠です。例えば、ビデオ会議ツールなどを活用することで、地理的な障壁を超えたコミュニケーションを可能にします。

・1人1人に意思決定への権利を認識してもらう
ダイバーシティの推進には、全ての社員が意思決定に参加する文化を作ることが重要です。これには、意思決定過程における透明性の確保や、多様な意見が尊重される環境を整えることが含まれます。

・ダイバーシティに関する相談窓口を設置する
社員がダイバーシティに関する問題や提案を気軽に話せる環境を作るためには、相談窓口の設置が効果的です。これは、ダイバーシティに関する意見や懸念を共有するための安全な場を提供し、組織全体の改善につながります。

まとめ

ビジネスにおいて「ダイバーシティ」は多様な人材を生かし、イノベーションと競争力を高める重要な概念であることをお伝えしてきました。

ダイバーシティとインクルージョンは、多様性を集めるだけでなく、それを企業文化に組み込み活用することを意味します。ダイバーシティ経営の成功事例としてベネッセ株式会社や株式会社キャスターを取り上げて紹介しました。ダイバーシティは、これからの多様性を大切にする時代でさらに目立つものとなることは間違いありません。今のうちにしっかり理解しておきましょう。

■執筆者プロフィール
阿部佳乃
阿部 佳乃(あべ よしの)
アナウンサー×日本語教師/元TBSテレビあさチャン!報道リポーター。大学卒業後、佐渡ケーブルテレビを経て、UX新潟テレビ21/NHK水戸放送局キャスター/とちぎテレビアナウンサー。現在は、アナウンス講師、ナレーター、イベント司会等、フリーランスで活動しながら、大学や日本語学校で留学生に「日本語」を教えている。趣味は、旅行(47都道府県制覇)と声楽、読書。
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