アメリカでは11月に、4年に1度の大統領選挙が行われるし、ロシアでも3月に、6年ぶりの大統領選挙が行われる。アメリカや中国が小競り合いを繰り広げる現在、これらのイベントは今後の世界の行方を左右するものになるだろう。
それ以外にも2024年には各地で総選挙などが開催される予定だが、今年、最初に注目される国際的なニュースは、1月13日に投開票される台湾の総統選挙だといえる。
日本にとっても重要になる選挙ということもあり、本稿では、台湾の総統選挙について、基本的なところからひもといてみたいと思う。
台湾を「国」として認めているのは、13カ国のみ
まず大前提として、台湾の立場について触れたい。台湾では、多くの人が台湾を国であると主張するが、決してそうではない。世界で台湾を「中華民国」という国であると認めているのは、13カ国だけだ。一方で中華人民共和国(中国)は、台湾を自国の一部であると考えている。中国は、「1つの中国」という考え方を戦略の一環としており、2022年10月には、中国の習近平国家主席が「祖国の完全な統一は必ず実現しなくてはならないし、必ず実現できる」と発言している。しかも、武力行使も辞さない、とまで語っている。
そんなことから、民間企業などが誤って台湾を1つの独立国のような扱いをしてしまうと、中国は激しい反発を見せる。事実、例えばファッションブランドのブルガリ、ヴァレンティノ、カルバン・クライン、コーチ、ザラ、ギャップ、航空会社のデルタ航空、ホテルチェーンのマリオットなどが台湾を国と扱ったり、中国の地図から台湾を排除したことで糾弾され、不買運動などのボイコットが起き、結局、謝罪に追い込まれた。
台湾と中国の歴史を簡単に振り返る
結果、争いに勝利した中国共産党は1949年に現在の中国である中華人民共和国を樹立。敗れた国民党は、台湾に逃れて中華民国の政府を作った。以降、中国本土には中華人民共和国が、台湾には中華民国という2つの政権が存在することになった。
そして戦後70年以上にわたって、台湾と中国は、それぞれ別々に治められている。中国政府は、自分たちこそが「中国」であると強硬に主張。この分断は、台湾を支持する欧米諸国や、中国を支持する国とが勢力を争う構図を生んでいる。
現在、台湾(中華民国)は独自の政府を持ち、独自通貨や独自のパスポートもある。もちろん、台湾軍も存在する。中国とは違って、直接選挙で自分たちのリーダーである総統を選ぶ民主国家だ。