不謹慎と言われるかもしれませんが、こういう時に必要なのが、エンターテインメントであるとも思います。現実から離れ、フィクションの世界に没頭して何かを得る映画は、むしろ現実で生きるための大きな活力になるのではないでしょうか。
ここでは、2024年1月5日に劇場公開となったばかりの、おすすめの映画5作品を一挙紹介しましょう。
はじめは景気のいいアクション映画3本。続いて鬱屈(うっくつ)した気持ちをも生きる力に変えてしまうようなドラマ映画1本。そして、今のタイミングでおすすめすることをためらってしまう一方で、今だからこそ見てほしいという気持ちも大きいディストピアサスペンス映画1本。
というラインアップになっています。
1:『エクスペンダブルズ ニューブラッド』
2010年に第1作目が公開された、シルヴェスター・スタローンを筆頭とする(筋肉量マシマシのB級映画方面にやや偏っている気もする)アクション映画スターが勢ぞろいする人気シリーズの第4弾です。基本的に「強いおじさまたちが戦う!悪い奴をぶっ倒す!以上!」というシンプルで豪快なコンセプトを楽しむ内容なので、シリーズ初見でも問題なく楽しめるでしょう。 今回の大注目は『マッハ!!!!!!!!』(2003年)のトニー・ジャーと『ザ・レイド』(2011年)のイコ・ウワイスという、アジアのアクション映画の超実力者が参戦すること。ベテランメンバーとの共闘、真っ向からの対決が待っているのもたまりませんし、前作ではマイルドだった残酷描写が盛大に復活してR15+指定になったことを大歓迎する人もいるはずです。 なお、今回の『ニューブラッド』は海外の評価と日本の試写での感想はやや厳しいものもあり、確かにネタバレ厳禁の“とある要素”などが、熱心なファンからの賛否両論を呼んだのだと理解できます。しかし、個人的にはその要素があってこそのジェイソン・ステイサムの愛おしさとかっこよさ、そして「女性を敬う精神」にキュンキュンできたので、シリーズ最高傑作の呼び声が高い2作目に並ぶほど大好きな映画になりました。 また、このシリーズは「自らを『消耗品』と名乗る最強の傭兵(ようへい)軍団」という設定に沿うかのように、身を粉にして映画に向き合い続け、年齢を重ね体が衰えてもいる俳優自身の姿を自虐的に批評したような、一抹の哀愁をも漂わせることも魅力。同時に「そんなの知ったことか。俺たちでやってやるぜ!」と漢(おとこ)たちが滾(たぎ)る様に熱くなれるのです。新年の幕開けにもっともふさわしい1本でしょう。2:『シャクラ』
『ジョン・ウィック コンセクエンス』(2023年)で第2の主人公といえる活躍を見せた香港のアクション俳優ドニー・イェンが、製作・監督・主演を務めた作品。メインプロットは「殺人の濡れ衣を着せられた男が追われながらも戦う」といった、シンプルなもの。とある女性と知り合いながらも、決死の行動を取らざるを得ない主人公に同情を禁じ得ないでしょう。最大の見どころは、「炎を出す」「気を操る」といったいい意味で荒唐無稽寄りのアクションの数々。それらがハイスピードのカンフーアクションと組み合わさったおかげで「香港の武侠映画でアメコミヒーローが戦っている」ような感覚にもなり、超人たちのバトルをワクワクしながら楽しめます。実写映画『るろうに剣心』シリーズなどで知られるアクション監督・谷垣健治の手腕と、俳優それぞれが繰り出す体技があってこその「キレ」も見どころです。
難点は、「長編小説『天龍八部』が原作で、4人いる主人公のうちの1人のエピソードの映画化」ということもあって、登場人物が多めで終盤に向けて物語もやや複雑化していくこと。原作をまったく知らない人にとって「よく分からない」箇所が散見されるのは、やや厳しいものを感じました。それでも、前述した通りのシンプルなメインプロット&ゴージャスなアクションを期待すれば十分に楽しめると信じています。