先週、さいたま市PTA協議会が日本PTA全国協議会(略称、日P)から2023年度末で退会することを決め、注目を集めました。日Pは近年ガバナンスを問われる状況が続いており、2022年度末には東京都小学校PTA協議会(現・東京都PTA連合会)が退会しています。
最近は、P連でもPTAと同様に、退会の動きと改革の動きが両方見られるようになってきました。P連というのは、市区町村や都道府県など、各自治体単位でつくられるPTAのネットワーク組織のこと。P連で活動するのは、各PTAの会長や役員さんたちです。
P連も各PTAに対し、加入を強制できるような権限はもたないのですが、これまたPTAと同様、多くのP連では長い間、強制加入のような状態が続いてきました。そんななか、P連を退会すべきか、改革すべきか悩む役員さんも見かけます。
今回は特に、市区町村のP連をPTAが退会または改革するケースについて、見ていきたいと思います。
P連加入継続への賛否を会員に問う例も
PTAがP連を抜ける、という話を最近よく聞くようになりましたが、実はこのとき、事務局や他校の保護者、校長などから「横やり」が入ることは珍しくありません。地域によっては「何ごともなくP連を抜けられるほうがビックリだ」というくらいでしょう。そのため「抜けようと思ったが諦めた」「何とか抜けたけれど、詰められて本当に大変だった」という話は、大変よく聞きます。P連はタテマエ上、「PTAの上部団体ではない」ということになっていますが、文部科学省や教育委員会、学校の権威をカサに着て、PTAに上からモノを言う事務局や役員さんが残念ながら結構いるのです。
よく「P連に『抜ける』と伝えたら『それは会員の総意か? 役員だけの考えではないのか』と言われて、撤回を迫られた」といった話も聞きますが、これも首をひねってしまいます。そもそもP連に入っていることだって、会員の総意と言えるのや否や。P連への加入について賛否を問われた経験がある一般会員は、めったにいないのでは。
ですが、P連を抜けるかどうか、会員みんなに意見を聞くのもそれはそれでいいことと思います。例えば、関東地方のある小学校のPTAでは、改革に向けてアンケートを行った際、P連への加入継続についても会員に賛否を尋ねることに。
アンケートの前には、資料を配布しました。一般会員はそもそもP連を知らないので、「P連とはどんなものか」「PTAは市P・県P・日P(全国組織)にそれぞれ年にいくら納めているのか」「PTA会員1人あたり約何円を負担しているのか」「会長や役員が年にどれくらいP連の集まりに出ているか」などの情報を伝えたのです。
そのうえでアンケートを行い、「市P連への参加」「県P連への参加」「日Pへの参加」についてそれぞれ継続の賛否を問うたところ、「継続希望」の回答はどれも1割前後だったため(「取りやめ」「どちらでもいい」「分からない」が計9割前後)、正式に退会を決めたということです。PTA会長はこう振り返ります。
「県Pや日Pと比べると、市Pについては『継続希望』の回答がやや多かったですし、われわれ役員も市Pには残りたい気持ちがありました。でも市Pの事務局に問い合わせたら『県Pと日Pだけ抜けるということはできない』と言われ、市Pも抜けざるを得ませんでした。
これまで、うちのPTAは毎年、市P・県P・日Pに計10万円くらい払ってきましたが、本当はP連もお金をかけず、もっとよい活動をできると思います。1学級あたりの子どもの人数を減らすよう要望を出すとか、学校で性加害が起きていないか保護者にアンケートをとるとか。そういうことをP連でできたら、とてもよかったんですが……」
同じような声は以前、解散したあるP連の元役員さんからも聞いたことがあります。「学校には、いじめの問題、学校に行っていない子どもたちのこと、制服を着られず苦しんでいるトランスジェンダーの子どもたちのことなど、いろんな課題があります。本当はP連で、そういう問題を共有して話し合いたかった」と。
なお、つい4、5年前までは「P連を抜ける」と言うと「県Pがやっている保険に入れなくなるよ」と脅されて諦める、というのが“PTAあるある”でしたが、最近は「自治体のボランティア保険に入る」「個々のPTAで保険会社と契約する」といった代替手段があることが知られ、「保険がネックで抜けられない」という話はほぼ聞かなくなりました。
他方では、各PTAや保護者のつながりを生かす例も
さて、ここまでP連退会について見てきましたが、他方ではP連の在り方を見直す、改革する、といった動きもたまに聞くようになりました。以前筆者が取材したある市Pは、年々加入率が下がり続け、活動や分担金を減らしても歯止めがかからなかったため、いったん解散したうえで、分担金ナシの新しい組織(ネットワーク)をつくりました。いまも各校の保護者がゆるやかにつながって活動しているといいます。
P連とはやや異なりますが、「“会長会”で情報共有できるのが助かる」といった声も割合よく聞きます。
例えば、こんな話も。ある自治体の教育委員会が、周年行事を控えた学校の校長とPTA会長を呼び出して説明会を行い、「学校への寄贈品として避けてほしいもの」や「来賓(自治会長など)の機嫌を損ねないように気を付けること」などを指示したため、違和感を抱いた会長たちが情報交換を始めました。
なぜ、教育委員会がPTAにこんなことを言えるのか? なぜ学校がPTAから寄贈品をもらう前提なのか? さまざまな意見や各校(PTA)での経験談が交わされ、最終的には「連携は必要だし大事なことだが、PTAが何でもかんでも学校や教育委員会の言いなりになる必要はない」という認識を共有できたそうです。
こういったケースは、現状そう多くはないかもしれません。実際は、教育委員会や学校からの求めにむしろ進んで応じる会長も多いと思うのですが、でも中にはこんなふうに、各PTA共通の課題について会長会が議論し、歯止めの役割を果たすこともできなくはないわけです。