そんな「鏡餅」について、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。
(今回の質問)
鏡餅はいつどこに飾る? 飾り終わったらどうするのが正解?
(回答)
鏡餅は12月28日を目安に、床の間かリビング、神棚、子ども部屋などに飾ります。そして、1月11日(地方によっては15日)の鏡開きに食べます。
どういうことなのか、以下で詳しく解説します。
「鏡餅」の由来は? どうして「鏡餅」って言うの?
伝統的な正月行事は、年神様という新年の神様を家に迎えるために成立しました。鏡餅は、家にやってきた年神様が依りつくところ、つまり居場所です。鏡餅の丸い形は、昔の鏡「銅鏡」に見立てられています。伊勢神宮をはじめ、丸い鏡をご神体としているところがたくさんあるように、年神様が依りつく鏡を餅で表しているので「鏡餅」というわけです。
餅を大小2つ重ねるのは、月と太陽、陰と陽を表しているといわれています。
鏡餅はいつ飾る? 飾ってはいけない日に注意!
年神様は元旦にいらっしゃるので、大掃除が済んでから鏡餅を飾って迎える準備をし、「鏡開き」の日まで飾っておきます。鏡餅を飾る日について、12月29日は二重苦、苦餅(苦持ち)につながり、31日は葬儀の前日に飾りつけをする「一夜飾り」と同じになるので避ける習わしがあります。28日までを目安に、遅くとも30日には飾りましょう。ただし、29日をふくと読み、福を呼ぶ福餅として歓迎するところもあります。
鏡開きは一般的には1月11日に行いますが、松の内が1月15日までという地域では、1月15日または20日に行われています。
鏡餅はどこに飾る? 飾ってはいけない場所は?
年神様は鏡餅をお供えした場所に依りつくので、1つに限らず、複数お供えしても構いません。メインの鏡餅は、床の間か神棚へお供えします。床の間や神棚がない場合には、リビングのように家族が集まる場所に飾りますが、テレビの上のような騒がしい場所や、見下すような低い場所ではなく、リビングボードの上などにきちんとお供えしましょう。
そのほかにも、仏壇、台所、書斎、子ども部屋など、年神様に来ていただきたい大事な場所にお供えします。
「鏡開き」の正しい方法は? 包丁で切るのはNG?
鏡開きはお供えしていた鏡餅を下ろして食べる行事で、一家の無病息災を祈願する意味が込められています。年神様が依りついていた鏡餅には、年神様の力が宿っているとされ、鏡餅を食べることで1年を生きる力を授けてもらうとされました。もともと武家から始まった行事なので、切腹を連想させる刃物で切るのは禁物で、手で割り砕くか、木槌で開くようになりました。また、「割る」という表現も縁起が悪いので、末広がりを意味する「開く」を使うようになり、「鏡開き」になったのです。
開いた餅は、お雑煮やお汁粉、かき餅などにして食べます。鏡餅は、供えたものを下ろして食べることに意義があるので、小さなかけらも残さず食べてくださいね。
この記事の筆者:三浦 康子
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。