そんな「おせち料理」について、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。
(今回の質問)
おせち料理にはどんな意味がある? 食べ方のルールは?
(回答)
おせち料理は、家に迎えた年神様と新年を祝う料理で、1つ1つの料理に願いが込められています。祝い箸を使って食べるのが習わしです。
どういうことなのか、以下で詳しく解説します。
おせち料理の起源・由来は?
おせち料理は昔、お正月だけのものではありませんでした。おせちのルーツは平安時代の宮中行事で、元日や節供(節句)などの節日に神様に料理をお供えし、共に食べる習わしがあり、これを「御節供(おせちく)」「節供(せちく)料理」といいます。当時の庶民には縁遠いものでしたが、江戸時代に一般大衆に広がり、1番重要なお正月の料理をさすようになって、「おせち」と略されて親しまれるようになりました。
お正月は、五穀豊穣の神でありご先祖様でもある「年神様」を家に迎え、新年の幸福を授けていただく行事なので、収穫物の報告や感謝の意を込め、本来はその土地でとれたものを用います。暮らしや食文化が豊かになるに従い山海の幸を盛り込んだごちそうになっていき、現在のおせちの原型ができました。
おせち料理の意味は? 地域によって違う?
お正月は年神様という新年の神様を迎える行事です。おせち料理には、年神様にお供えした料理を分かちあうことで結びつきを深め、その恩恵にあずかるという意味があります。そのため、五穀豊穣、子孫繁栄、家内安全、無病息災、長寿などの祈りを込めて、縁起の良い海の幸、山の幸を豊富に盛り込みます。なかでも欠かせないのが、“人生で大事なこと”を表した「三つ肴」で、関東、関西と地域によって異なります。
■関東の三つ肴
・イワシが田畑の肥料だったことから豊作を願う「田作り」
・子孫繁栄を願う「数の子」
・まめに働き健康であるよう願う「黒豆」
■関西の三つ肴
・ごぼうのように深く根を張り代々続くようにと願う「たたきごぼう」
・子孫繁栄を願う「数の子」
・まめに働き健康であるよう願う「黒豆」
また、おせちを重箱に詰めるのは、「めでたさが重なる」「福を重ねる」という意味を持つためです。
おせち料理を食べるときの必須アイテム「祝い箸」って?
おせち料理を食べる際は、両口が細く削られている「祝い箸」を使用。一方を年神様用と考え、年神様と人が共に食事をすることを表しています。また、祝い箸にはおめでたい別名があります。
・祝いの席で折れたりしないよう丈夫な柳の木が使われているので「家内喜(やなぎ)箸」
・中ほどが太めになっているので、五穀豊穣を願う「俵箸」
・中ほどが太めになっているので、子孫繁栄を願う「はらみ箸」
祝い箸は、大みそかに主人が家族の名前をそれぞれの箸袋に書き、神棚か鏡餅のところに供えておきます。元旦にそれを用いたら、自分で清めて(洗って)、松の内(1月1~7日)または三が日は同じ箸を使います。
最近は、和食以外の料理を取り入れ、正月のごちそうとして楽しむ家も少なくありませんが、三つ肴だけでも用意したり、祝い箸で食べたりすると、文化に込められた思いを取り込むことができるでしょう。
この記事の筆者:三浦 康子
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。