「お雑煮」が地域によって違うのはなぜ? どのような違いがある? 【専門家が解説】

「お雑煮」が地域によって違うのはなぜなのか、どのような違いがあるのかなど、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。

お雑煮が地域によって違うのはなぜ?
お雑煮が地域によって違うのはなぜ?
お正月に食べる「お雑煮」。地域によって違いがあるのは有名ですが、なぜ違いがあるのか、どのような違いがあるのか知らない人も多いのではないでしょうか。

そんな「お雑煮」について、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。
 

(今回の質問)
お雑煮が地域によって違うのはなぜ? どのような違いがある?

(回答)
京文化の「白みそ仕立て/丸餅を焼かないで煮る」お雑煮に対し、江戸で「しょうゆ仕立てのすまし汁/角餅を焼いて入れる」お雑煮を作るようになり、これらをベースにその土地の特産物や食文化が融合して郷土色豊かなお雑煮となりました。


どういうことなのか、以下で詳しく解説します。 

お雑煮の「起源」と「意味」って?

「お雑煮」という料理は、室町時代に武家社会の儀礼的な宴で出されたのが始まりです。本膳料理の前菜として、お酒を飲む前に胃を安定させるために食べた煮物で、臓腑を保護・保養することから「保臓(ほうぞう)」と呼ばれ、「宝雑」「烹雑」と書くこともありました。
 
それが江戸時代にお餅を入れて雑多なものを煮込む「雑煮」となり、地域や家庭によって特色がでるようになりました。
 

お雑煮は、その年の魂=その年を生きる力を取り込むための料理だと考えられています。その年の魂を「年魂(としだま)」といい、年神様が依りついた餅には年神様の魂が宿ると考え、そのお餅を家長が家族に分け与え(これがお年玉のルーツ)、頂戴したお餅を食べるための料理がお雑煮というわけです。

「関西風」「関東風」で特徴が異なる

地方によってさまざまなお雑煮がありますが、大きく分けると2つの特徴があります。
 
■関西風:白みそ仕立て/丸餅を焼かないで煮る
京文化の影響の強いところでは、白みそ仕立てに丸餅という基本に、その土地の食文化が融合しています。例えば、日本海側や山間部では赤みそを使います。

丸餅なのは、年神様に供える鏡餅を模しているからで、伝統を重んじています。

■関東風:しょうゆ仕立てのすまし汁/角餅を焼いて入れる
江戸文化の影響の強いところでは、すまし汁に焼いた角餅を基本とし、その土地ならではの具材が入ります。みそを使わないのは、武家社会でしくじるという意味の「味噌(みそ)をつける」に通じて縁起が悪いからです。

角餅なのは、寒冷地でもカビやひび割れをしないよう、のし餅にして切り分けるようになったから。角餅でも焼いて膨らめば丸くなるため、焼いて入れるようになりました。

海産物が入ったものからあんこ入りのお雑煮まで!?

関西風・関東風は、関西地方・関東地方という単純なものではなく、その土地の礎を築いた人が京文化・江戸文化どちらの影響を受けているかが反映されています。全国的にすまし汁が多いのは、参勤交代で地方に江戸文化が伝わったためだといわれていますが諸説あります。
 
そしてそこに特産物や独自の文化が融合し、郷土色豊かなお雑煮となりました。海辺の町では魚が入り、山里では地元の野菜が入る。香川などで甘い小豆あん入りの餅を入れるのは、稀少な砂糖をせめて正月に食べたいという思いの表れです。
 
【例:地域別お雑煮の特徴】
・餅をくるみだれにつけて食べる「宮古くるみ雑煮」(岩手県)
・焼きハゼやいくらが入った「仙台雑煮」(宮城県)
・鮭といくらの親子が入る「親子雑煮」(新潟県)
・はばのりと青のりをたっぷりかける「はば雑煮」(千葉県)
・角餅と餅菜だけの「名古屋雑煮」(愛知県)
・名産のカキを入れる「カキ雑煮」(広島県)
・おしるこのような「小豆雑煮」(島根県)
・白みそ仕立てにあん入り餅を入れる「あん餅雑煮」(香川県)
・焼きあごでだしをとりブリを入れる「博多雑煮」(福岡県)

この記事の筆者:三浦 康子

和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。

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