連載「鉄道雑学ニュース」
乗り物の域にとどまらず、見ても、撮っても、もちろん乗っても面白い鉄道の世界。知れば知るほど奥が深くて面白い鉄道に関する最新情報&雑学を、「All About」の鉄道ガイドで旅行作家の野田隆が自ら撮影した駅舎や車両画像とともに分かりやすく解説する。
館内で開催中の「大機関車展」に合わせて、この電気機関車に特別なヘッドマークを装着するイベントも行われているが、12月13日から28日までの期間限定で装着されるORIENT EXPRESS '88というヘッドマークが話題になっている。
35年前に日本国内を走ったオリエント急行
若い人はご存じないかもしれないけれど、バブル絶頂期の1988(昭和63)年秋、ヨーロッパの名列車オリエント急行が来日してJRの路線を走った。このイベントを「ORIENT EXPRESS '88」という。フジテレビ開局30周年を記念し、JR東日本をはじめJR各社、日立製作所などの協力で行われた大イベントだった。オリエント急行に魅せられたフジテレビの名プロデューサー沼田篤良氏による奇想天外な発案から生まれたといわれている。このイベントの実現について、当初は否定的な意見が多かったが、JR東日本の副社長(当時)山之内秀一郎氏の協力もあり、多くの困難を乗り越え実現したと語り継がれている。
ギネスに登録されたパリ発東京行きオリエント急行
1988年9月7日、パリ・リヨン駅をフランスのSLにけん引されて出発した16両編成の列車は、ドイツでは01(ゼロイチ)形SL重連など各国のSLにけん引されながら東進、線路幅の異なるソ連(現・ロシア)では台車を履き替え、シベリア鉄道を経由し、国境で再び台車を標準軌のものに戻し、中国を南下した。香港からは船で日本に運ばれ、日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)で台車をJR走行用のものに履き替えたほか、さまざまな改造工事が短い日数で行われた。 その後、諸般の事情から編成を短くして11両+JRの控車2両=13両となった列車は、EF65形電気機関車にけん引され、広島駅から夜行列車として山陽本線・東海道本線を走り、10月18日の朝、東京駅に到着した。パリ発東京行きのオリエント急行は、世界最長距離の列車としてすぐにギネスに登録されている。 その後、国内では、東京(上野)~京都間を中心に日本一周ツアー(9泊10日=88万円)など各地への運転が行われ、青函トンネルを通過して札幌へ、瀬戸大橋を渡って四国へ、そして九州へと全国に足跡を残した。バブル期であったためか、高額な料金であったにもかかわらず、抽選をするほどの何倍もの申し込みがあったという。