4:『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(12月22日公開)
こちらは超人気の双子YouTuberが監督を務めたオーストラリア製の作品。SNSで流行している呪われた“手”の置物を握る「90秒憑依チャレンジ」に参加したことから、取り返しのつかない事態に発展していきます。不遜な若者たちが「ウェ〜イ!」と調子に乗っていたからこそ、PG12指定ならではの痛いシーンの怖さがギャップとして際立ちますし、精神的な意味での地獄への突き落とし方、その後の追い込み方も容赦がなく、いい意味で絶望的な気分にもなれるでしょう。重要なのは、女子高生の主人公が母を亡くしていること。その憑依チャレンジで死んだ母と再会できた(?)ことがまた彼女を苦しめ、事態をエスカレートさせていくこともまた悲しかったりもします。ミニマムな範囲の物語ながら伏線が張り巡らされており、次々と予想の斜め上の出来事に翻弄(ほんろう)されるためエンタメ性は抜群。映画としての妥協のない画作りやサウンドデザインにもなっているので、ぜひ劇場で見ることをおすすめします。
5:『サンクスギビング』(12月29日公開)
2007年公開の古き良きB級映画を復活させた『グラインドハウス』内にあった「フェイク予告編」を16年の時を経て長編映画化した作品です。その最大の特徴は日本でR18+指定されたことが大納得できる残酷描写! 『ファイナル・デスティネーション』シリーズに近いひどい(褒め言葉)アイデアの死に様の数々が、もはやブラックユーモアの領域に入っています。そのいい意味での突き抜けた悪趣味さ以外は、ホラー映画としてまっとうな作り。「ぶっ飛んでいるようでいて現実にもあり得る」事件が起こるオープニングから、因縁のある若者たちが次々に殺される展開には伏線も大いに仕込まれており、現代を舞台にしたからこそのSNSの活用の仕方にも感心させられます。「クリスマスにもハロウィンにもホラー映画はたくさんあるから、自分たちは感謝祭(サンクスギビング)でもやってみよう!」という作り手の心意気も感動的(?)です。
6:『NOCEBO/ノセボ』(12月29日公開)
記憶喪失や幻覚に悩まされるファッションデザイナーの元に、雇った覚えのない乳母がやってきて、伝統的な民間療法で治そうとする物語です。その乳母は夫から不審に思われる一方、幼い子どもからは気に入られたりもして、「支配」されるような感覚になるでしょう。タイトルのノセボの意味は「反偽薬」で、プラセボ(偽薬)効果とは逆に薬物や医師に対する不安感などの心理作用により、望まない有害な作用が現れること。そのノセボ効果を寓話(ぐうわ)として示した作品といえます。その乳母はフィリピン人であり、ともすればアジア人への蔑視的な内容になっていないかと不安も覚えましたが、実際の本編はその逆で、現実の世界にある「視野狭窄(きょうさく)」や「搾取」の問題を浮き彫りにしていました。ロルカン・フィネガン監督は『ビバリウム』(2019年)でも「囚われた」家族の物語をいい意味で気味悪く描いており、確かな作家性を感じさせるはずです。
絶賛の口コミの嵐の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を優先的に見て!
さらに、11月17日より劇場公開中のアニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は連日SNSで絶賛の声やファンアートが盛り上がっており、3週連続で興行収入が右肩上がりになる異例のヒットとなっています。『犬神家の一族』や『ミステリと言う勿れ』的な殺人事件ものに加え、バディもの+怪奇もの+戦後ものの要素が見事に融合した、PG12指定大納得のおどろおどろしさにも意義がある素晴らしい内容で、『ゲゲゲの鬼太郎』をまったく知らなくても楽しめるので、ぜひ優先的にご覧になってほしいです。