「施工」とは、日常的に使われる言葉ではなく普段の生活にはあまりなじみはないかもしれませんが、建築や不動産業界では広く使われる言葉です。「施工」の正しい読み方や「施行」との違いや使い方についてフリーアナウンサーの小川厚子が解説します。
<目次>
・「施工」の意味とは
・「施工」の正しい読み方
・「施工」と「施行」の違い
・「施工」と「工事」の違い
・「施工」の使い方と例文
・「施工」の関連語
・まとめ
「施工」の意味とは
施工とは計画された工事を実施することです。設計図や仕様図をもとに、計画的に建築物やインフラ整備などを行うことを指します。
また、所定の性能、仕様、意匠を作り上げることです。建築や土木業界など工事をする業界や不動産業界では頻繁に使われる言葉です。
「施工」の正しい読み方
「施工」の読み方は、「せこう」でも「しこう」でもどちらも間違いとはいえません。しかし、「施工主」や「施工図」など「せこう」でしか読めない使い方もあり「せこう」と読むのが一般的になっています。
またNHK言葉のハンドブックによりますと、放送では「施行」と聞き間違えないようにするため「施工」は「せこう」、「施行」は「しこう」と読まれます。
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「施工」と「施行」の違い
「施工」と「施行」はどちらも「しこう・せこう」と読むことができる同音異義語です。
漢字も似ていて間違えやすいのですが、「施工」は建築関係で使われる言葉で、工事や建築を実際に行うことを意味します。
「施行」は法律関係で使われる言葉で、政策や計画などを実際に行うことや、すでに成立している法令の効力を発生させることを意味します。この場合「新しい法律が施行される」のように使われます。
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「施工」と「工事」の違い
「施工」とは「工事を実施すること」で、建築中のことを言います。「工事を施す」という意味を持ちます。従って工事中を意味します。作業自体のことは指しません。「工事」は、土木、建築などの建設作業や、造船、ネットワーク配線などの構築作業をする行為を表し、作業自体を意味します。「工事する」のように実際に作業を行うことも意味します。
実際に作業を行うことについては「施工」も「工事」も使えますが、作業自体を指すのは「工事」のみ使うことが一般的です。「工事」の方が広い意味を持つといえるでしょう。
「施工」の使い方と例文
「施工」は工事や建築を実施することを意味します。「施工」という言葉は、工事を実施することや、計画された工事を実施していることなどを表現する時に使われます。
【例文】
「リフォームの施工にかかる費用をメーカーに相談しています」
「こちらが、大手ハウスメーカーが施工中のマンションです」
「我々は建築現場の施工管理をしている会社です」
「公共事業の施工業者の選定が現在行われています」
「施工」の関連語
着工
「施工」は工事を行う期間全ての日を指しますが、着工は建築や土木などの工事を開始する日、始めることを指します。「着工」は家や建物などの建築物だけでなく、道路や鉄道などの工事でも使われます。時期の捉え方が違いますので、使い方には注意が必要です。
【例文】
「新居の建設を来月から着工します」
「道路工事が先月着工されました」
竣工
「竣工」は工事を終えること、完了する日を指します。実際は工事が終わっただけでは竣工とは言いません。竣工検査まで済ませて、実際に使える状態であることが竣工の正しい意味です。「施工」と「着工」「竣工」は意味が違います。
それぞれの言葉は工事のタイミングによって使い分けられます。工事の進行状況によって適切な言葉がありますので、それぞれの言葉を理解して使い分けるようにしましょう。
【例文】
「ようやく下水管工事が竣工しました」
「新社屋の工事は来年春には竣工する予定です」
建築
「建築」とは人間が活動するための空間を内部に持った構造物を、計画、設計、施工、そして使用するに至るまでの行為の過程全体、あるいは一部のことです。「施工」は建築の流れの中の一部です。
【例文】
「私の父は建築業を営んでいます」
「私は古代の建築物を見るのが好きですが、現代建築にも興味があります」
まとめ
「施工」と「施行」は全く意味が違いますが、間違えやすい言葉です。「施工」は建築関係、「施行」は法律関係で使うことを理解しておきましょう。
また、「施工」に似た言葉で「着工」「竣工」などがありますが、「施工」は工事をしているということを意味し、「着工」は工事を始めること、「竣工」工事が終わることを意味しますので意味は全く違います。工事のタイミングによって使い分けられるよう覚えておきましょう。