市区町村、都道府県ごとに「○○市(県)PTA連絡協議会」「~協議会」「~連合会」といった団体をつくっており、それらは「P連(ぴーれん)」などと呼ばれています(P協、連Pなどの呼称もある)。P連に参加するのは主に、各校のPTA会長さんたちです。
これらのP連を全国的に取りまとめるのが「公益社団法人 日本PTA全国協議会」で、略称は「日P」(にっぴー、にちぴー)。
今回取り上げるのは、この「日P」の話です。
保護者らから集めたお金など、年1億3000万円の収益
聞いたことがない人が大半かもしれません。保護者や教職員も、PTA→市区町村のP連→都道府県のP連を経由して、この「日P」にお金を払っていることが多いのですが、意識している人は少ないでしょう。日Pは毎年多額のお金を投じ、推薦を受けたPTA等にホテルニューオータニで文部科学大臣賞を授与する「年次表彰式」や「周年式典」、複数のテーマで講演会等を行う「日本PTA全国研究大会」などのイベントを開催。そのほかにも詩のコンテスト、中学生向けの国内研修などの事業も行っていますが、どれも一般の保護者や教職員にはほとんど知られていません。
ただし、お金はたくさん持っています。令和3年度(2021年度)の収益は約1億3000万円、正味財産は約3億8000万円。筆者には正直なところ、必要をはるかに上回るお金を持ってしまったために、そのお金に振り回されている団体のように見えるのですが。
近年は日Pの存在意義を問う声もあがり、今年度はついに東京都小学校PTA協議会(現・東京都PTA協議会=都P)が脱退。さらに、この都Pの役員らが「一般社団法人 全国PTA連絡協議会(略称、全P)」という新団体を設立しています。
赤字の最大の原因は「雨漏りの修繕に2000万円」?
さて、そんな「日P」で今、何が起きているのでしょうか。目を引くのは、今年6月に報道された「5000万円の謎の赤字」と、翌7月に起きた「突然の会長交代劇」です。ニュースで見かけたけど、何があったのかよく分からなかった、という人が多いのでは。経緯を説明しましょう。
赤字が表面化したのは、6月の上旬でした。6月23日に開催される定時総会に先立って、日Pが各地方協議会(都道府県&政令市のP連)宛てに、昨年度(2022年度)の総会資料を送付。そこで、4740万円の赤字が出ていたことが分かったのです。
関係者によると、数年前にも3000万円規模の赤字が出たことがあったものの、決算報告の記載方法が各協議会や一般企業のそれとはだいぶ異なるため、気付く人がいなかったようです。
しかし今回は、協議会会長の中から「おかしい」と声があがり、このうちさいたま市PTA協議会は日Pに「公開質問状」を送って、赤字の経緯などについて書面での回答を求めていました。
これに対し、日Pは書面での回答は行わず、総会の場で出席者に口頭で説明。物価の高騰に伴う交通費や宿泊費の上昇、PTA新聞の制作などの業務委託費、広告制作費などといった赤字の原因をあげたということです。
さらにもう1つ、最も出席者を驚かせたのは「日P会館(東京・赤坂にある事務所ビル)の雨漏りの修繕に2000万円かかった」という話でした。内訳も示されず、説明もなかったため、いつもはシャンシャンで終わる総会が、この時は大荒れだったといいます(関係者談)。