オープンリレーションシップのおかげで夫婦生活が改善?
一方、 “夫婦公認”でありながら、セカンドパートナーを超え、肉体関係を持つパートナーがいる女性もいる。「夫とは別居中です。別居中は“お互い恋愛は自由にしよう”と話しています」
こう話すのは、エイミさん(仮名/30代)だ。彼女が別居に至ったのはこんな理由があった。
「夫は『子どもが欲しい』と言ってくるくせに、数年レスでした。さらに互いの価値観の違いが原因でけんかもすることも増えて。私から『離婚しよう』と切り出したんです。でも夫は、『絶対に離婚はしない』と」
エイミさんは何度も夫と話し合った。しかし、レスや価値観の相違が解消されることはなかった。
「新婚でレスだったのが一番つらかった。でも、結婚したということは、生涯夫以外の人としてはいけない契約。『レスだから』『したいから』という理由で、夫以外の人とすると不貞行為になってしまう。それを分かっていたからこそ、離婚するしかないと思ったんです。でも夫は『何があっても離婚はしない』の一点張りで。
何度話し合っても解決しない。だから私は『離婚しない。でも、他の人とするのは許してくれるよね?』と聞きました。
こうしてたどり着いたのが、セカンドパートナーを超えた、オープンリレーションシップ(既婚・交際中であっても、互いに合意の上でほかの人とも肉体関係を結ぶこと)だったんです」
こうして、2人は別居を始めた。エイミさんの夫も、エイミさんの提案をしぶしぶ受け入れたという。
「別居してすぐ、彼ができました。彼とは数カ月は仲良くやっていたのですが、ここで問題が出てきて……。彼も既婚者だったのですが、『離婚して一緒になろう』と言い始めたんです。私の気持ちも一瞬揺れたけど、それだと夫との約束を破ってしまう。悩んでいるうちに、彼とは不仲になって別れました」
その後の別居生活で、別の彼もできたというエイミさん。彼ができたことで、夫との関係が良くなった、と話す。
「現段階で夫と離婚を考えることはなくなりました。別居して夫婦生活が改善したんです。関係に悩む夫婦の選択肢としてオープンリレーションシップがあれば、夫婦生活の解決方法になる可能性はあるのではないかと感じています」
あくまで、別のパートナーを作ることは“夫婦公認”が前提としながらも、エイミさんは最後に本音を語った。
「夫に彼のことは言いませんし、私も夫の恋愛事情は聞きたくありません。もし、私が別の男性とデートをしているところを夫が見たら、ショックを受けると思うし、逆もしかり。私も夫がほかの女性とデートをしているところは見たくないし、見たら許せないと思う」
“夫婦公認”は本当にありえるのか?
近年生まれた「セカンドパートナー」「オープンリレーションシップ」という新しい価値観。その考え方に救われたと語る、エイミさんのような存在もいる。その一方で、これらに否定的な意見が多いのは、このようなカタカナ言葉が“都合のいい言葉”と受け取られることが多いからだ。
そもそも、冒頭で紹介したあやなんさんとしばゆーさんの場合、SNS上で不倫騒動が勃発していた。その後、「私たち夫婦には数カ月ほど前から夫婦公認でセカンドパートナーが存在しています」と、突然告白したのである。
さらに「私たち夫婦と、パートナーの2人合わせて4人でのディナーもして家族にも紹介済みです」と“夫婦公認”を強調し、夫婦関係は修復に向かっていると話したのだ。
その際にSNS上では、不倫騒動を「セカンドパートナー」という聞こえのいい言葉でごまかしている、と非難が殺到した。
もしセカンドパートナーが“夫婦公認”であれば、何の問題もないはずだ。しかし、“夫婦公認”を公表する前、あやなんさんはセカンドパートナーであるはずの夫のパートナーを「不倫相手」だと糾弾していた。
今回取材したセカンドパートナー経験者についても、それは同様だった。
“夫婦公認”としながらも「夫が別の女性とデートをしているところは見たくないし、見たら許せないと思う」と語るエイミさん。そもそも“非公認”で夫に隠れてセカンドパートナーをアプリで探すミナコさん。
果たして“夫婦公認”のセカンドパートナーは、ありえるのだろうか。
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この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。