そして、漫画をアニメ映画化した名作の数々は、まだまだたくさんあります。それらを一挙10作品紹介しましょう。いずれもテレビアニメシリーズは展開されておらず、それぞれ映画単体で楽しめる内容になっていますので、ぜひ気軽に見てみてほしいのです。
1:『北極百貨店のコンシェルジュさん』(2023年10月20日より劇場上映中)
お客さんが全て動物という不思議な百貨店でコンシェルジュとして働き始めた、新人のお姉さんを主人公とした作品です。失敗しても頑張り続ける様を心から応援したくなる「お仕事映画」で、ほっこりとできる優しい(時にシビアな)小さな話の積み重ねが心地よく、ラストには意外な感動もあり、70分というコンパクトな上映時間ながら高い満足感が得られる、老若男女におすすめできる内容になっていました。
全2巻の原作は素朴な味わいのある絵柄で、今回の映画ではその魅力を再現をしつつも、コロコロと表情を変えるキャラクターそれぞれがとっても愛らしくなっており、アニメ化の意義と制作会社Production I.Gの高い技術を再確認できました。豪華声優陣の声がかわいい動物のキャラクターそれぞれにピッタリで、きっと見た人それぞれの「推し」ができるでしょう。個人的には津田健次郎ボイスのマンモスがイチオシです。
2:『金の国 水の国』(2023年)
裕福だけど水が枯渇している金の国と、水があるけど貧しい水の国それぞれに住む男女が偽りの夫婦を演じ始めるものの、そのうちに「もう……お互いに大好きだろ……!今すぐ本当に結婚しろ!」と思えてくるラブストーリー。全編にわたって「箱入り娘のようで実はたくましいぽっちゃり体形の女性」「お調子者のようで実は聡明かつ誠実な長身の青年」の関係性がたまらなく愛おしいのです。
ファンタジックな要素はほとんどなく、実際の国際政治を想起させるさまざまな事情が絡む物語はやや複雑ですが、小学校高学年くらいからであれば問題なく理解できるでしょう。全1巻の原作のエッセンスを117分の上映時間にしっかり落とし込んでおり、背景美術もきれいで、賀来賢人と浜辺美波の演技も絶品。「人間1人1人の力は小さいかもしれないけど、それでも世界を良くするためにできることはあるかもしれない」という、普遍的な希望も得られるでしょう。
3:『ぼくらのよあけ』(2022年)
子どもたちが宇宙人を帰してあげようとする、団地という身近な舞台を生かした王道のジュブナイルSFアニメ映画です。子どもたちがさまざまなことにチャレンジしていく様にワクワクすると同時に、徐々にシビアさや大人たちの思惑を見せていくドラマも見どころ。全2巻の原作が連載されていたのは2011年と10年以上も前なのですが、子どもの承認欲求や同調圧力への悩みは、SNSが興隆した今だとよりリアルで切実なものに感じられるでしょう。
さらなる魅力は、AIロボットの“ナナコ”が世界中のありとあらゆる創作物のロボットの中で、1番かわいいと断言できること。人懐っこくて、喜怒哀楽の感情表現が豊かで、何より人気声優の悠木碧の演技のキュートさはほかの何にも変え難く、ドラえもんと並んで一家に1台ほしくなることでしょう。「ロボットはウソをつけるのか?」という問いかけに対する、深い回答にも注目です。
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