日本で浸透しない心理カウンセリングを占いに置き換えている?
占い師はカウンセラーだったのか……そんなことを考えれば考えるほど、納得がいく。筆者が友人に誘われて占いに行ったのも、A美が占いに行ったのも、元をたどれば仕事や恋愛に悩んでおり、自分のことを知らない“誰か”に話を聞いてほしかったからだ。
自分のことを知っている友人や家族に、なかなか打ち明けられない悩みも、第三者であれば、気軽に打ち明けられる場面は多々ある。そんな時ぱっと思いついたのがカジュアルに相談できる占い師だったのかもしれない。
日本では現状、欧米諸国などと比べて「カウンセリング」がまだまだ普及していないといわれている。カウンセリングというと、治療の一環として医療機関が行う場合もあれば、厚生労働省が運営する相談窓口、各地域の保健所のサービスなど、有料のもの、無料のものを含め種類も数多い。しかし、精神科や心療内科で行う場合でも、全てのカウンセリングが保険適用になるわけではないなど、ハードルも存在する。
文化的な側面でいえば、日本ならではの同調圧力や、耐え忍ぶことを美徳とする傾向なども、カウンセリングの普及の遅れに影響しているのかもしれない。
確かに、筆者の感覚でも「カウンセリングを受ける」と言うと、何か大事のような気がしてしまう。
誰かに話を聞いてもらいたいと思っても、プロに話を聞いてもらうにはハードルが高いのが日本の現状なのだ。
占いならではの“自分に都合のいい言葉”が救いになることも
心理カウンセリングのハードルが高い日本において、占いはカジュアルなカウンセリングの側面もある――そう考えると昨今の占いブームにも納得がいく。とはいえ、筆者には1つひっかかることがあった。ひと言もしゃべっていないのに、占い師が筆者の職業を当てたことだ。これについては、カウンセリングは全く関係ない。
するとB子は冷静にこう言った。「予約するときに名前を入れるでしょ? 事前に検索して、知ってたんでしょ。それ以外にもPCを持ち歩いているのが見えたとか、服装とか、いろいろと職業を想像することはできる」
B子の冷静な分析を聞いて「やっぱり占い師は超能力があるのではないか」という筆者の期待は打ち砕かれた。占い師のあの励ましはどこまで信じたらいいのか……。
とはいえ、「あなたはこの仕事が向いているわ!」という占い師の言葉に背中を押され、頑張れたことはたくさんあるのだ。
誰だって“自分のことを知らない”誰かに悩みを聞いてもらいたいときがある。
もちろん占いにのめりこみすぎるのはよくないが、占い師の“自分に都合のいい言葉”だけを信じて、悩み多きアラサー世代を戦っていきたい。
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
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