連載「鉄道雑学ニュース」
乗り物の域にとどまらず、見ても、撮っても、もちろん乗っても面白い鉄道の世界。知れば知るほど奥が深くて面白い鉄道に関する最新情報&雑学を、「All About」の鉄道ガイドで旅行作家の野田隆が自ら撮影した駅舎や車両画像とともに分かりやすく解説する。
2027年度の開業は延期になったものの着々と工事が進むリニア中央新幹線。その始発駅は東京駅ではなく品川駅である。なぜなのか調査するとともに、品川駅の利便性についても考えてみた。
リニア中央新幹線の起終点が品川駅となった公式理由
まずは、JR東海の東京広報室に尋ねてみた。その回答は下記の通りである。「東海道新幹線の始発駅、終着駅である東京駅周辺は、すでに高度に開発されており、地下空間の利用が進んでいることから駅空間の確保が困難です。一方で、品川駅は駅空間の確保が可能なうえに、東海道新幹線やJR各線のほか、羽田空港と結ぶ京急線が乗り入れるなど、東京駅と同じく既に交通機関の結節点として重要な役割を担っておりますので、中央新幹線の始発駅、終着駅として大変便利な駅であると考えています」
少し具体例を織り交ぜながら補足してみよう。新たに路線を敷設するとなると、地上や高架はありえず、地下にトンネルを掘るしかない。ところが、東京駅の場合、丸の内側には総武快速線や東京メトロ丸ノ内線がある。
一方、八重洲口側にはかなり広大な地下街と駐車場があり、北は東京メトロ東西線、南にはJR京葉線の東京駅、さらに東京メトロ有楽町線、丸ノ内線も丸の内側から銀座側へと線路が延びている。このわずかなエリアだけでも数多くの路線が、文字通り縦横無尽に交錯している。これでは「駅空間の確保が困難」のみならず、路線を敷設する空間も確保できないであろう。
東京駅が無理であるならば、都内の他のターミナルが候補になる。ただしリニア中央新幹線は東海道新幹線のバイパス的役割を担い、2つの路線が一体となることが想定されるので、東海道新幹線と遠く離れた新宿や渋谷はありえない。そうなると、都内で東海道新幹線のもう1つの停車駅である品川駅しかない。
品川駅港南口の地下で進む新駅建設工事
幸い、品川駅は現時点では地下鉄路線が乗り入れていない。これは、都内のターミナルでは稀有なことであるが、リニア中央新幹線建設にとっては好都合なことだ。といっても品川駅のどこでも良いわけではなく、利便性を考えて東海道新幹線品川駅の直下に始発駅を新設することとなり、すでに工事は始まっている。 品川駅の港南口(東口)付近は再開発により多くのオフィスビルが林立し、ビジネス客の駅利用が増加中だ。さらに北側には高輪ゲートウェイシティが建設中で、品川駅周辺は丸の内あたりと並んで都心におけるもう1つのビジネスの一大拠点として発展しそうである。
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