「子育てしながら働く」にモヤモヤしたら……
「子育てや介護などの理由に左右されない選択肢あふれる社会を創りたい」。私はこのようなビジョンを掲げるNPO法人ArrowArrow(アローアロー)で、中小企業を含めた組織で働く人の産育休取得に向けたサポートを中心に、子育てしながら働くことを望む人と組織の選択肢を拡げる活動を10年以上してきました。読者の中には、子育てをしながら働くことや、そうした働き方をする人が近くにいることに、モヤモヤとした思いを抱えている人もいるかもしれません。もちろん、子育てしながら働くことにおける個々人の考え方や在り方は、人によってさまざまであり、そもそも正解も答えもないと思っています。
しかし、「子育てしながら働く」という状況が刻々と変化していることや、関わる人たちにとってどのような変化があるかを理解することは、自分自身や状況を客観視する機会として有効かもしれません。
今回は、今日までの「働く」を取り巻く変化を振り返るとともに、私が「働く」の現場で見聞きした子育てしながら働く人と組織の声をご紹介します。
「24時間働けますか?」の終焉。ワーク・ライフ・バランスの登場
すっかりおなじみになった「ワーク・ライフ・バランス」という概念が生まれたのは、東日本大震災の少し前の2007年のこと。内閣府が「働き手の減少」「少子化」「多様な働き方」という3つの課題を解決するため、「子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会にする」という社会のありたい姿を行動指針とともに打ち出したのです。
また、2010年以降、過剰に働く・働き過ぎる問題に対して抑制するような動きが徐々に加速しました。2018年には働き方改革法が成立。個々人の働き方において「働き過ぎない、ちゃんと休む」ということを義務付けられるようになってきています。
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