原作のないオリジナル企画かつ、テレビシリーズなども放送していないので予備知識がなくても楽しめる。監督の作家性が色濃く表れ、かつエンターテインメント性も高い、「これだけは見てください!」と心からお願いできるアニメ映画を4作品紹介しましょう。実際に鑑賞することはもちろん、監督の名前もぜひ覚えていただきたいのです。
1:『アリスとテレスのまぼろし工場』(岡田麿里監督)
2023年9月15日より劇場公開されている作品です。ジャンルをいうのであればダークファンタジー恋愛ミステリー。製鉄所の爆破事故により「時間が止まってしまった」町で、思春期をこじらせている少年少女の恋愛劇が展開するとともに、ちりばめられた謎を解き明かしていく独創的な内容となっています。
作品のメッセージは主人公と同じ年代の中高生にこそ届いてほしいですし、「閉塞感」を抱えた経験のある人にこそ響く物語にもなっています。映画館で観てこそ、その濃密な作品の魅力を真に堪能できるのは間違いありません。
2:『東京ゴッドファーザーズ』(今敏監督)
元競輪選手、元ドラァグクイーン、家出をした女子高生という、なんともクセの強いキャラをした3人のホームレスが、ゴミ捨て場で見つけた赤ちゃんを親元へ返そうと奮戦するというコメディードラマ。1948年のアメリカ映画『三人の名付親』に着想を得た内容で、2010年に46歳の若さで亡くなった今敏監督の最高傑作と呼ばれることも多い作品です。
ほかの今敏監督作はグロテスクな描写、現実と妄想が交錯する演出があり、だからこそインパクトがありつつ、やや見る人を選ぶところもあったのですが、本作はおおむねでハートフルな内容で比較的万人向け。
3人の主人公はコロコロと表情を変えて(難のある性格も含めて)愛らしく、意外なアクションシーンにハラハラもさせられます。それでいて、生々しい描写の数々は今敏らしさ全開。極めて現実に近い表現をあえてアニメでやるからこそ、むしろアニメの表現の豊かさを思い知らされます。
さらに、今敏の監督デビュー作となる『PERFECT BLUE』が2023年9月15日より劇場で上映。こちらのジャンルはアニメ映画では珍しいサイコサスペンス(ホラー)で、性的なシーンや残酷描写がありR15+指定がされているのでご注意を。小説を原案としているものの内容はほぼオリジナルであり、その独創性が後のクリエイターに多大な影響を与えています。
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