同作はよしながふみさんの大ヒット漫画を原作として、2019年4月にテレビドラマを放送。2021年秋には劇場版が公開されるなど、男女問わず人気を集めるドラマシリーズです。
『きのう何食べた? season2』の放送開始に合わせて、元テレビ局スタッフの筆者が同作の魅力やseason2の注目ポイントを解説していきます。
どこにでもいるカップルを描いた作品
『きのう何食べた?』は、2人の中年男性の愛を伝えるドラマです。西島さんが演じるのは、真面目できちょうめんな弁護士・筧史朗。通称「シロさん」と呼ばれ、収入があるにもかかわらず2人分の食費をきっちり決めて節約料理を作ります。
内野さんが演じる「ケンジ」こと矢吹賢二は、ロマンティストな美容師。思い込みやすいところもあって、たまにやきもちを焼いてシロさんを困らせることがあるかわいらしいキャラクターです。
このドラマ(漫画も含む)の他にない魅力は、ゲイカップルの描き方にあります。ドラマや映画では、どこかステレオタイプでこれまでは色物的に扱われていたゲイの世界を、ていねいに、そして優しく描いています。
シロさんとケンジは、ありふれたどこにでもいるカップル。『きのう何食べた?』では、大きな事件もなく何気ない日常を見ることができます。ケンカをしてすれ違うこともあれば、互いの価値観を認め合ってより深く関係を結ぶことも。等身大のカップルの姿を映し出しています。
新しい価値観も視聴者に提供
これまで特殊な存在として取り扱われがちだったゲイカップルを、どこにでもいる愛し合う2人として見せることに成功しています。さらに、男性同士だからこその苦悩やトラブル、さらに家族との関係性など多くの視聴者が知らないと思われるエッセンスも入れることで、新しい価値観も視聴者に提供しています。
また、このドラマの特徴は、さまざまなトラブルもコミカルに描かれることです。特にお調子者で明るい性格のケンジがかわいらしく、人を好きになることの大切さを教えてくれます。
多様化が叫ばれている中で、どのメディアでも同性愛はまだセンシティブな題材として扱うことが大半。そんな時代の中で、多様性とは何なのか? そんな深いところまで、テーマが重くならずに考えさせてくれるドラマになっています。