恋の“勘違い”をうまく表現、赤楚衛二主演『こっち向いてよ向井くん』は大人が見るべき恋愛ドラマ

話題作が豊富の2023年夏クールドラマ。本記事では『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)の魅力を、元テレビ局スタッフが解説します(画像出典:『こっち向いてよ向井くん』公式Webサイト)。

日本テレビ系ドラマ『こっち向いてよ向井くん』(画像出典:公式Webサイト

2023年の夏ドラマは、王道ラブストーリーから人気シリーズの最新作、さらには超大作まで注目作品が目白押しです。日々、ニュースなどで視聴率や見逃し配信の再生数が報じられ話題を集めています。
 

多くの作品が折り返しを迎える中、今から見ても楽しめるドラマの1つが『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)です。元テレビ局スタッフの筆者が、まだ見ていない人に向けてその魅力を紹介します。
 

同作は、ねむようこさんの漫画が原作で、主人公の向井悟を赤楚衛二さんが演じています。共演は波瑠さんや生田絵梨花さんなど実力派ぞろい。日本テレビ系で毎週水曜の22時から放送中です。
 

男と女の本音が痛い! 恋の勘違いをうまく表現したドラマ

結婚まで意識した恋人と破局し、10年間にわたって恋から遠ざかっていた「恋愛迷子」の向井くんを中心に、30代男女の恋模様が描かれていきます。見た目も良く性格もやさしく仕事もできる向井くんの前には、さまざまな恋人候補のすてきな女性が現れます。
 

そんな向井くんの最大の弱点は、恋に関する「勘違い」です。その勘違いが、作品の中で秀逸に描かれていきます。
 

ドラマでは、はじめに恋の標的となるのが、向井くんが働く会社に派遣社員としてやってきた田辺桃子さん演じる中谷真由。真由は思わせぶりな態度が多く、勘違いした向井くんはアプローチを仕掛けていきます。しかし、実は真由は向井くんの後輩が意中の人で、あっけなく振られることに。

実際、ストーリーを追うと視聴者も真由は向井くんに気があるように見えます。しかし、ドラマでは真由を主軸とする演出に切り替わり、どこが勘違いだったのか丁寧に説明されます。
 

女性の心理描写がすごい

このドラマの魅力の1つは、この女性サイドの心理描写にあります。伏線回収のように女性の本音が再現VTRとして描かれ、しっかりと向井くんが凝り固まった価値観で勘違いしていることが分かります。それらは、男性からすると心臓に悪い本音ばかり。例えば向井くんは、事あるごとに「女性を守る」「誠実な男」といったキーワードを繰り出します。
 

実は、過去にも向井くんはこの価値観で、大切だった彼女を失っています。生田さん演じる藤堂美和子と別れたのも、「ずっと守ってあげたい」という一言がキッカケ。なにから女性を守るのか? そもそも男性が女性を守るべきなのか? 多くの男性が使命感のように思っている勘違いを、女性目線からおかしいと指摘してきます。

その価値観は、2人目の恋人候補である、久間田琳加さん演じる羽鳥アンにもしっかりと発揮されます。アンは、向井くんの義弟が経営する飲食店の従業員で顔なじみ。向井くんに気があり、いきなりキスしてくるなどアプローチを仕掛けてきますが、結局は向井くんが「誠実な男だから」と考えを巡らせているうちに、他の男性と付き合い始めてしまいます。
 

この向井くんの勘違いや間違った価値観は、どこか男女ともに心に刺さるものがあります。ジェンダーレスの問題もささやかれる中で、男女の恋愛はこうでなくてはいけない! という価値観を壊す作品に仕上がっています。
 

>次ページ:みんな恋に悩んでいる、だからこそ面白い
 

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

編集部が選ぶおすすめ記事

注目の連載

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    静岡の名所をぐるり。東海道新幹線と在来線で巡る、「富士山」絶景ビュースポットの旅

  • ヒナタカの雑食系映画論

    『グラディエーターII』が「理想的な続編」になった5つのポイントを解説。一方で批判の声も上がる理由

  • アラサーが考える恋愛とお金

    「友人はマイホーム。私は家賃8万円の狭い1K」仕事でも“板挟み”、友達の幸せを喜べないアラサーの闇

  • AIに負けない子の育て方

    「お得校」の中身に変化! 入り口偏差値と大学合格実績を比べるのはもう古い【最新中学受験事情】