アメリカのスパイ機関がiPhoneに侵入できるという話も
またこんな話もある。ロシアの情報機関であるFSB(ロシア連邦保安庁)が主張するところでは、アメリカのスパイ機関であるNSA(国家安全保障局)も簡単にiPhoneに侵入しているという。
もちろん侵入するには脆弱性を悪用するなどの必要があるため、アメリカ政府機関は、iPhoneをハッキングするための脆弱性を把握していることになる。ロシアの主張の根拠は分からないが、少なくとも筆者はNSAの元幹部からiPhoneへのハッキングは「不可能ではない」と聞いたことがあるので、ロシアの言うことは間違ってはいないだろう。
こう見ていくと、iPhoneは常に危険にさらされていることが分かる。さらにそんなiPhoneにある脆弱性をアップデートせずに使い続けていると攻撃を受けやすくなるのも、すでに述べた通りだ。
「iPhone 8」「iPhone X」ユーザーはこれを機に買い替えを
いずれにせよ、iPhoneをアップデートすることができなくなるサポート切れは危険極まりない。特に、iPhoneを仕事のメールチェックやその他の業務などでも使っているとすれば、スマホに侵入されてしまうと、勤務先や仕事上でリスクを広げてしまう可能性もある。
今「iPhone 8」や「iPhone X」を使っている人たちは、最新のiOS 17が使えなくなるのと同時に、スマホを買い替えた方が賢明だろう。それがアップル社のビジネス戦略だと分かっていても、である。
筆者:山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」