今、史上最悪とも言われた日韓関係が、これまでになく改善し始めたと期待されている。
関係改善の最大の理由は、2022年5月に韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(以下、ユン大統領)の政権が発足したことだった。それまでの文在寅(ムン・ジェイン)大統領(以下、ムン前大統領)とは違い、ユン大統領は北朝鮮の脅威を阻止するために米韓や日韓関係を重視する方針を示している。
しかし、これまで日韓関係を観察してきた人たちからすれば、またいきなり反日活動が起きて、韓国側が方針転換する可能性があるのではないかとの懸念があるのも事実だ。今回の関係改善は本当に期待できるのだろうか。
ユン大統領就任後の主な動き
ユン大統領は就任後から積極的に西側諸国との関与を強化した。2022年6月には、欧米の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)のサミットに、韓国大統領として史上初の参加。さらに同年9月には米ニューヨークでジョー・バイデン大統領(以下、バイデン大統領)が主催する「グローバルファンド増資会合」の会議に出席し、バイデン大統領とあいさつを交わしている。
2023年4月には、バイデン政権で2人目となるアメリカへの国賓訪問を行った。米政府は、距離を置いたムン前大統領とは違って、ユン大統領に同盟国として期待していると示したのである。また米議会でもスピーチを行い、韓国企業がいかにアメリカで経済的な貢献をしているのかを強調し、ユン大統領が希望していた電気自動車大手「テスラ」のイーロン・マスク氏との面談も実現した。
アメリカが「ワシントン宣言」を発表
そしてアメリカでは「ワシントン宣言」を発表。ホワイトハウスによれば「両大統領(バイデン大統領とユン大統領)は、広範囲の抑止力の強化と、核・戦略的な計画を協議し、北朝鮮による核不拡散体制への脅威に対処するための核協議グループ(Nuclear Consultative Group)新設することを発表した」。さらに、原子力潜水艦などを含むアメリカの戦略核兵器を朝鮮半島で展開するという。
韓国に米軍を駐留させているアメリカは、韓国との関係改善は不可欠であるとの認識を持ってきた。特に、日本やアメリカにとっては、覇権主義的な中国の動きやウクライナに侵攻したロシアと、過去にないペースでミサイル発射実験を続ける北朝鮮が、東アジア地域でかつてないほどの大きな脅威となっている。
そんな情勢だからこそ、日本とアメリカ、韓国、台湾などはこれまで以上に同盟関係を密にして強化しなければならない。