BTSを生み、BTSでトップに登った「HYBE」の特色、競合3社との違いとは?【K-POPゆりこの沼る韓国】

M世代の韓国エンタメウォッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし! #13は「K-POP業界を代表する大手事務所」について。

BTSを生み、BTSでトップに登ったHYBEの特色、そして競合3社との違いとは?

写真:AP/アフロ
BTS 写真:AP/アフロ


ゆりこ:お答えし甲斐のあるギモン、ありがとうございます。正しく言うとBTSとTOMORROW X TOGETHER以外の名前の上がったグループは、それぞれ「別レーベル」の所属です。ある程度の独立性を担保されている中で、各アーティストを選抜し育成、デビューさせています。

矢野:それぞれ別の世界観、ターゲットを持って違うスタッフが独自のものを作る。つまりファッション業界で例えると、LVMHという会社の下でルイ・ヴィトンやディオール、ティファニーがそれぞれのブランドを確立している感じと近しいですか?

ゆりこ:そういう多面的な展開を目指しているように見えます。HYBEはBTSでの成功と増収を糧に、次々と買収を進めて大きくなってきました。その点もLVMH社との共通点かもしれない。BTSと近い世代の対抗馬で、すでに大きなファンダムを抱えていたSEVENTEENの事務所も傘下に入れた時はビックリしました。

ゆりこ:2023年3月3日に公開された米CNNのインタビューの中でパン・シヒョクさんは、BTSは別として、各レーベルの独立性を大事に思っているから他のアーティストついては担当各所に任せていると言っていましたね(※2)。
 


矢野:斜に構えた意見ですが、SMスタッフやSMファンへのアピールも入っているかもしれないと思いつつ、いずれにしてもこれまでの3大事務所とはある種「逆」のスタイルで上手くいったということですね。そして今、何かとザワついている「SM騒動」にもつながると。SM、YG、JYPのような「独特のカラー」が見えにくいのも、複数社のカルチャーが入り混じっていたり、複数のレーベルを運営しているからだと考えると納得できます。

ゆりこ:先ほど「創業者の音楽の嗜好が全体に影響する説」を唱えたのですが、パン・シヒョクさんが職業ソングライターだったという点もある気がします。大事なのは「俺色」よりも歌うアーティストに合うかどうか。だから彼の作ったヒット曲って、結構ジャンルがバラバラなんです。演歌みたいなしっとりバラードも得意ですし、ダンス曲も作れる。

矢野:自分がアーティストとして表現したいことより、「他者が聴きたいメッセージ」「他者の魅力が引き立つこと」を大事にするタイプのクリエイターなのかもしれないですね。

ゆりこ:あくまで推測ですが、そう思います。何にでも染まれる透明なカラー、それが強みなのかもしれません。「防弾少年団」としてすでに人気を得ていたところ、突然「BTS」に改名しちゃう臨機応変さ、固執しない姿勢もすごいなと思います。そんな中で、あえてHYBEの特徴を無理やり言語化するなら「青春病」かなぁ……。

矢野:むむむ、「青春病」……全然分からないです。

ゆりこ:すみません。つい好きな藤井風さんの曲名をお借りしました。パン・シヒョクさんの過去作を聴いてみると、若さゆえの葛藤や青い恋を歌わせるのがお上手だなという印象。ちょっとセンチメンタルな曲が多いのです。どこかキュンとするような。誰もが一度は青春の病に冒されるもの、だからこそ共感を呼びますよね。

矢野:BTSの「青春3部作」がまさに。

ゆりこ:当時の韓国をはじめとする10代の若者が抱える世の中への不満、行き場のない葛藤を歌ってヒットしました。

矢野:言われてみるとTOMORROW X TOGETHERもBTSとはまったく違う、ファンタジックな世界観で少年が大人になるまでの過程を表現していますよね。

ゆりこ:他レーベルのENHYPENやNewJeansも同じく「青春」という一貫したテーマが根底にあるように感じます。
 


矢野:どの事務所のグループも多様性を見せるためにいろんなコンセプト、ジャンルの曲に挑戦するので一概には言えないのですが、そういう「どうしても光っちゃう強いテイスト」を各社持っていると。そういった事務所のカラーを知りつつ、いろんなグループを聴いていくのは面白そうですね。

ゆりこ:いいなと思ったグループや曲を見つけたら、その事務所の先輩、後輩の曲も聴いてみるのをおすすめします。箱推しならぬ事務所推しも楽しいですよ。たとえ推しのグループが活動休止や解散して落ち込んでも、また同じ事務所の若手グループにハマって立ち直れてしまうのもK-POPオタクあるある。

矢野:事務所の合同ライブやフェスで長年の推しと最近の推しの共演が見られたら……かなりテンション上がりそうです。

ゆりこ:K-POPファンを続けて良かったと思う瞬間ですよ。さて今回は簡単にK-POPの代表的な事務所4社についてお話ししましたが、いかがでしたか?

矢野:実は、逆に気になることが増えちゃいました。そういえば日本でいうレコード会社ってあるのかな? とか。「事務所」と一言でいっても何をしているのかなとか。このタイミングで申し訳ないのですが(笑)。

ゆりこ:では次回、そのあたりについて改めてお話ししましょうか。SMのお家騒動についても引き続きウォッチしていきます。

矢野:この先のテーマが決まりましたね。楽しみにしています!
 

【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウォッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いた後、ソウル生活を経験。

編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)。
 

参考
※1:プレスリリース
※2:米CNN 2023年3月3日

 

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