聴かせるSM、HIPHOPのYG、POPなJYP……創業者の好みと音楽性が事務所のカラーを左右する!?
矢野: あれ? この流れでいくとSMのイ・スマンさんも?
ゆりこ:スマンさんも元歌手です。代表曲はバラードが多め。それゆえなのか、SMアーティストの曲って激しいダンス曲や前衛的なサウンドの中にも必ずと言っていいほど、“歌い上げるパート”が入ってくるのですよ。だからどのグループにも迫力ある伸びやかな声が出るボーカリストが必ずいる。しかも複数。
矢野:ラップのあとの聴かせる部分ですよね、わかります。カラオケで歌ったら気持ちよさそうな。
ゆりこ:そうそう。ちなみにあと4大事務所の中には入りませんが、CNBLUEなどバンド系アイドルを多く輩出しているFNCエンターテインメントという大手事務所がありまして、そこの創業者も元バンドマンだったそうです。
矢野:そういえばJYPも、J.Y. Parkさんがお得意とするR&B、ファンクの要素がところどころに感じられます。健康的なのに、どこか少し艶っぽい雰囲気とか。
ゆりこ:大手の創業者で唯一の現役歌手ですもんね。面白い存在だと思います。彼がアメリカで過ごした子ども時代に出合った、80年代から90年代のブラックミュージック、ポップスの影響を色濃く感じます。
矢野:僕はやっぱりTWICEが好きなんですが、最近はスキズ(Stray Kids)にも惹かれるんですよ。
ゆりこ:JYP発アイドルの愛され力、最強だと思っておりまして。学校で例えるとSMアイドルが“高嶺の花”、YGアイドルは“カリスマ”とするなら、JYPアイドルは“人気者”。楽曲にもポジティブなパワーと親しみやすさを感じられます。
矢野:ナヨンさんのソロ曲のとおり「POP!」。アーティストも楽曲も「大衆に愛されてこそ」という信念があるのかもしれない。
ゆりこ:Nizi ProjectやLOUDなどJ.Y. Parkさんの関わるオーディション番組を見ると分かるのですが、才能やスキル以前に人間性を問う場面が多く出てきます。人としての魅力や誠実さが不可欠と考えているのでしょう。
矢野:TWICEの仲の良さを見ても、メンバー間の強い結びつきを感じます。いつ見ても仲良くキャッキャッしていて楽しそうだし、お互いのリスペクトも感じられて、みんなで力を合わせて切磋琢磨しながら進んでいるのだろうなと思います。
ゆりこ:2PMやGOT7など、たとえ契約終了後に事務所がバラバラになってもメンバー間の交流が続いていたりグループが存続しているのを見ると“チームワーク形成”を重視していたのかも、と思いますね。
矢野:そして退社してからも、餅ゴリ(J.Y. Park)さんとコラボすると。
ゆりこ:卒業生と先生の交流が続くJYPは俳優業へのキャリアチェンジが上手くいった例も多いです。2PMのジュノさん、GOT7のジニョンさん、女優のスジさん(元miss A)は代表格ですよね。
矢野:2PMのテギョンさんも、先日ニュースでアメリカのエージェンシーと契約したって聞きました。クエンティン・タランティーノやトム・ホランド、ポン・ジュノ監督と同じ会社だそうです。
ゆりこ:テギョンさんはアメリカに滞在していたことがあって、英語もお上手ですしね。
矢野:そういえば、オーディション番組でJ.Y. Parkさんが「個性が見えないと芸術じゃない」と仰っていたんですよ。自分だけの色や表現を追求するうちに、新たな才能を開花するアイドルもいるんだろうな。