「特別視」しない、もっと多様な描き方があっていい
前述したように、2020年の『ミッドナイトスワン』は高い評価を得る一方で、LGBTQ+の当事者からの反発を招きました。その意見には、真摯に耳を傾ける必要があるでしょう。トランスジェンダーの苦悩や生きづらさを、あくまで一例として「今まで知り得なかった人」に届ける意義は大きいとは思いますが、「LGBTQ+のキャラクターのかわいそうな姿ばかりがクローズアップされていた」ため、やはり「日本のLGBTQ+映画はまだ過渡期」だと思ったのです。しかし、前述した『世界は僕らに気づかない』は「LGBTQ+であることを特別視しない」作品でした。さらに、LGBTQ+がメインテーマでなくとも、『子供はわかってあげない』『ちょっと思い出しただけ』『ウェディング・ハイ』など、LGBTQ+のキャラクターが自然に登場する作品が、日本でも生まれ始めています(筆者のツイートではそれ以外にもご意見をいただきました)。
また、2023年2月23日よりNetflixで配信スタート、一部で劇場上映されている『ちひろさん』には、トランスジェンダーを公言しているモデルのvanが出演。演技初挑戦ながら、「バジル」という役柄と見事にマッチした存在感を見せており、“当事者キャスティング”が光ります。それ以外でも、「男女の関係は恋愛だけではない」など、多様な関係性や価値観が描かれる内容にもなっていました。
繰り返しになりますが、映画で描かれるLGBTQ+のキャラクターが、「不幸だったりかわいそうな姿」だけでいいはずがないのです。今後の日本映画で、その存在がもっと「当たり前」に、多様に描かれることを、願ってやみません。
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※各動画配信サービスの情報は執筆時(2023年2月27日現在)のものです。最新の内容をご確認ください。
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