映画『BLUE GIANT』は何がすごいのか。高級ジャズクラブのような臨場感に冒頭から感動必至【ネタバレレビュー】

シリーズ累計発行部数920万部を超える人気漫画の初のアニメ化作品、映画『BLUE GIANT』が2月17日に公開されました。“音が聴こえる”漫画の主人公・大のテナーサックスの“音”がついに明らかに! 鳥肌が止まらない2時間をレビューします。

涙目続きのストーリー中、筆者が最も感動した場面は……

原作漫画でも読んでいたストーリーとはいえ、思いもよらぬ出来事や演奏の素晴らしさに何度も涙があふれる2時間。個人的に最も感動したのは、「So Blue」で披露した玉田のドラムソロでした。

小学生の頃、筆者はドラムを習っていました。しかし、ポップやロックは楽しくこなせても、ボサノヴァあたりから音の強弱、シンバルの使い方が難解になり、ジャズなどはリズムの取り方からして別次元の難しさだったことを覚えています。

音楽の経験がなく、ジャズも知らなかった玉田が渾身のソロをこなす姿と、劇伴でドラムを担当した石若駿(いしわかしゅん)さんの演奏の素晴らしさが際立っていて、「ここまで来るのにどれほどの努力と熱意が必要だったのだろう」と、完全に玉田に感情移入してしまいました。
 

南青山「ブルー・ノート東京」がモデルの「So Blue」


3人が目指した日本最高のジャズクラブ「So Blue」。ここは、東京・南青山にあるジャズクラブ「ブルー・ノート東京」がモデルとなっていて、映画でも登場する「So Blue」のきらびやかな入り口は、「ブルー・ノート東京」の入り口そのものです。

2018年・2019年には、ブルー・ノート東京で「BLUE GIANT NIGHTS」が開催され、今回の映画で音楽監督を務めた上原ひろみさんをはじめ、アメリカのジャズ界トップドラマーであるケンドリック・スコットらが出演し、『BLUE GIANT』で描かれるような熱い音の世界が繰り広げられました。今思えば、この映画の前身となるライブが、すでに南青山で開催されていたわけです。
 

“JASS”のライブをまた観たい! 強い余韻を残す作品

完全に“JASS”のファン! レコードジャケット型パンフレットに感激(筆者撮影)

「2000円もしない金額で、こんな“ライブ”を観賞してしまっていいのだろうか」。これが、映画『BLUE GIANT』を観終わったときの率直な感想です。ブルー・ノート東京でなら、1万円以上のミュージックチャージは必須レベル。終始、鳥肌が立ち、ふるふると震えるような感動を覚えました。

ほかにも、石塚さんの原作の迫力をそのまま再現した映像、劇場版『名探偵コナン』シリーズを何作品も手掛ける立川譲さんが監督を務めるなど、ぜいたくな要素を挙げたらキリがありません。劇場を離れた瞬間から、“JASS”の3人のライブが恋しくなる、そんな強すぎる余韻を残した作品でした。


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