海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン 第11回

日本で子育てしたら「気疲れする」→したくない。海外在住日本人が思う、子育て環境としての限界

日本でたびたび巻き起こるベビーカー論争ですが、日本における子育て世代や母親たちへの風当たりの強さは何に起因するのでしょうか。海外に暮らしながら日本を見ると、日本社会特有の難しさを感じます。

日本で子育てしたら「気疲れする」

日本の人口密度は世界11位。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で全国の人口の約3割(総務省データより)を占める過密ぶり。

少し前に元バレーボール日本代表の大山加奈さんが、双子用ベビーカーでバスに乗車しようとした際に味わった不都合と悲しさをSNSに吐露したところ、多数の共感意見とともに激しい反論も寄せられたと聞きました。
 

>大山加奈さんの実際の投稿を見る
 

私自身も息子が幼児だった頃は、日本帰国の際は外出のたびに周囲に気を遣い、憔悴(しょうすい)したのを思い出します。そこで現在住んでいるヨーロッパで日本人のママ友たちに意見を聞いたところ、日本で子育てをしたいと希望する人はほぼ皆無でした。理由はやはり、「気疲れする」、「何かにつけ大変そう」というもの。
 

なぜ日本では、子育てする母親たちに対する風当たりが強いのでしょう?
 

ストレスの閾値をとうに超えた住環境

自分が日本に暮らしていたときには自覚していませんでしたが、日本の都市部は世界でも有数の人口密度の高さ(日本全体の人口密度は世界11位※)。住んでいるだけでも無意識に多大なストレスが溜まっていきます。
 

高額な家賃の割に狭い住居、電車に乗るにもカフェに入るにも長蛇の列、道を歩くと人の山で、自分の行きたい方向にすらなかなか進めないもどかしさ。食べ物は添加物の味が強く、雄大な自然の中で体を動かして気分転換をする機会も少ない。
 

加えて効率を最優先するあまり、常に急き立てられるような焦燥感に駆られる。コロナ禍を経て変化しつつあると聞きますが、職場においては周囲からの圧力で残業時間が伸びがちで、終業後も仕事上の付き合いが断りづらい……。
 

これほどまでにストレスを誘発する生活環境に身を置いていたら、混みあった狭い車内に双子のベビーカーで乗り込んでくる母親を見て、つい舌打ちしたくなるほど皆の心に余裕がなくなっていても不思議ではありません。
 

>次ページ:「周りに迷惑をかけてはならない」という呪縛教育

 

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