新型コロナウイルス(COVID-19)が流行してから、私たちの手洗いや消毒といった感染に対する予防行動は増加し、他国と比べて元々高かった公衆衛生観念はさらに高くなったまま継続されているのではないでしょうか。
今でも不特定多数の人が使う場所にはアルコール消毒液が置かれていることが当たり前のようになっていますよね。私もイベントなどの司会をするとき、感染予防対策の注意事項を伝える文言が最初の方に盛り込まれていて消毒の徹底を呼び掛けることも多くなりました。
その際に迷うのが「手指」は「しゅし」「てゆび」どちらの読み方が良いのかということです。今回はこちらについてお伝えします。
<目次>
・手指の意味とは?
・医療業界では「手指」の読み方は「しゅし」が主流
・「手指(てゆび)」という読み方はどこからきた?
・まとめ
「手指」の意味とは?
「手指」とは、手の先端部分にある指のことを指します。人間の手は通常、親指、人差し指、中指、薬指、小指の5本の指で構成されています。手指は、物をつかんだり、触ったり、指示を出したりするために使われます。
また、手指はコミュニケーションの手段としても重要であり、ジェスチャーや手話などを通じて意思や感情を表現することができます。手指は日常生活で非常に重要な役割を果たしており、さまざまな活動に使用されます。
医療業界では「手指」の読み方は「しゅし」が主流
医療業界では「手指」と書いてあれば「しゅし」と読み、国家試験や多くの医学事典でも同じで、「てゆび」とは読まないとのことです。
Webで医療・ケア用語が検索できる『DearCARE』では「手指衛生」=「シュシエイセイ」=「感染対策の基本で、手洗いや速乾性消毒剤によって、指、手、腕を清潔にすること」と記されています。
さらに「しゅし」について調べていくと、2018年1月12日刊行の『広辞苑 第七版』(岩波書店)には「しゅし」=「手のゆび」という説明はありますが、「てゆび」の項目はありません。また、『明鏡国語辞典 第三版』(大修館書店)も「しゅし」はありますが「てゆび」はありません。
「手指(てゆび)」という読み方はどこからきた?
一方、2020年11月19日第1刷発行の『新明解国語辞典 第八版』(三省堂)には、「てゆび」の項目はあり「手の指。手や指」と説明されていますが、「しゅし」の項目に「手指」の字はありません。
三省堂のWebサイト『DICTIONARIES&BEYOND WORD-WISE WEB』によると、この『新明解国語辞典 第八版』より前の版には「てゆび」も「しゅし」も入っていませんでしたが、新型コロナウイルスの流行下で入れた方が良いということになり、「てゆび」が掲載されたそうです。
新型コロナウイルス禍での社会の変化が辞書にも反映された形です。
まとめ
「手指」の読み方は、「しゅし」も「てゆび」も正しいといえるでしょう。口語で使うときは、「しゅし」と言うと、「趣旨」や「種子」などさまざまな同音異義語があり伝わりにくいことも考えられるので、「手と指」「手や指」と分かりやすく伝えるのが良いかもしれません。
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