「アルバイト」と「パート(正式名称/パートタイム)」の違いを正しく理解できている方は少ないはず。
求人票を見ると、募集の条件には雇用形態である「正社員」や「アルバイト」「パート」などの記載があります。一見、アルバイトとパートは同じように捉えられやすいのですが、どのような違いがあるのでしょうか。
今回は「アルバイト」と「パート」の違いについて、フリーアナウンサーの花崎阿弓が解説します。
・「アルバイト」の意味とは
・「パートタイム」の意味とは
・「アルバイト」と「パートタイム」における定義の違いは?
・「アルバイト」と「パートタイム」のメリット・デメリット
・「アルバイト」と「パート」も有給休暇はもらえる?
・「アルバイト」と「パート」も社会保険に入れるもの?
・求人を見るときは雇用形態以外の条件もチェック
「アルバイト」の意味とは
実は、アルバイトとパートにおいて、明確に法律上の違いがあるわけではありません。一方で、雇用する側にとっては、アルバイトとパートタイムで働いてもらいたい時間数や期間の条件が異なるのが一般的です。
そもそも、アルバイト(Arbeit)とは、ドイツ語で「働くこと」「仕事」といった労働全般を意味します。そのため、副業や何かのかたわら働くという意味も含んでいるのが特徴です。
辞書では下記のように記載があります(デジタル大辞泉)。
【アルバイト】
[名](スル)《労働・仕事・研究の意》
1 本業や学業のかたわら、収入を得るための仕事をすること。また、その仕事をする人。内職。バイト。「書店で—する」「学生—」
2 パートタイム労働法に定める短時間労働者に分類される雇用形態。臨時雇い。パート。バイト。→フリーター
3 学問上の作業。業績。
「パートタイム」の意味とは
パートタイム(a part time job)は英語で「正規労働より短い時間で働く」という意味を示します。そのため、短時間労働勤務と言い換えることが可能です。
辞書では下記のように記載があります(デジタル大辞泉)。
【パートタイム】
その企業の所定の労働時間と異なる短時間の勤務制度。短時間労働。パート。⇔フルタイム。
「アルバイト」と「パートタイム」における定義の違いは?
求人サイトなどで調べると、アルバイトに比べてパートは固定で長期間の勤務をして欲しい時に使われることが多い傾向にあります。
一方、アルバイトは短時間勤務で学業や何かの副業として手伝って欲しい際に使われることが多いでしょう。
ここで厚生労働省が発表している定義を確認します。
「パートタイム労働者」とは、パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象である「短時間労働者(パートタイム労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。
例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
ここでいう、「通常の労働者」とは、事業所において社会通念にしたがい「通常」と判断される労働者をいいます。この「通常」の判断は、業務の種類ごとに行い、「正社員」、「正職員」など、いわゆる正規型の労働者がいれば、その労働者をいいます。例えば、労働契約の期間の定めがない、長期雇用を前提とした待遇を受ける賃金体系である、など雇用形態、賃金体系などを総合的に勘案して判断することになります。
事業所に同種の業務に従事するいわゆる正規型の労働者がいない場合は、フルタイムの基幹的な働き方をしている労働者がいれば、その労働者が通常の労働者となり、その労働者より1週間の所定労働時間が短い労働者がパートタイム労働者となります。
正規職員ではなく、1週間の所定労働日数が少ないパート労働者の中に、パートもアルバイトも含まれると定義しています。
「アルバイト」と「パートタイム」のメリット・デメリット
先述したように、アルバイトとパートの意味に大きな違いはありません。
しかし、パートに比較して、アルバイトの方がシフトの融通がききやすく、自由な時間に働けるのが一般的です。そのため、学生や留学生でも採用されやすいといわれています。
しかし、アルバイトの場合、必ずしも入りたいシフトに入れるわけではない点がデメリットとして挙げられるでしょう。
一方で、パートは長期的に働けて、アルバイトより稼働できる時間数が多い分、稼ぎやすいメリットが挙げられます。パートの場合、幅広い年齢層の募集があることも魅力のひとつです。
パートのデメリットとしては、「固定のシフトが多いため、自由に休みにくい」「勤務時間が長い分、任せられる仕事量も増えるので忙しい」などが考えられます。
アルバイトとパート、それぞれのメリット・デメリットをよく理解したうえで、自分の希望する働き方とマッチする求人を選ぶのがポイントとなるでしょう。
「アルバイト」と「パート」も有給休暇はもらえる?
アルバイトやパートの有給休暇の取得条件は、雇用主や労働法によって異なります。一般的には、労働時間や勤務期間に基づいて有給休暇の権利が発生します。例えば、以下のような条件があります。・働くことになってから6か月以上が経過していること
・契約期間の8割以上を出勤していること
具体的な条件については、雇用契約や労働法を確認するか、雇用主に直接問い合わせることをおすすめします。
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「アルバイト」と「パート」も社会保険に入れるもの?
アルバイトとパートも社会保険に加入することができます。ただし、従業員数101人以上の企業で働く、以下の条件を満たす人が対象になります。※2024年10月には51人以上の勤め先が対象に加わります・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・2か月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く方と同様)
・学生ではない
参考:政府広報オンライン
求人を見るときは雇用形態以外の条件もチェック
「アルバイト」と「パート」には、法律上の明確な違いはありません。
しかし、求人サイトで募集要項に掲載されている意味合いとしては、アルバイトとパートで異なるケースもあります。
雇用形態のアルバイトやパートタイムの表記だけで判断するのではなく、勤務時間や働き方の欄もしっかりチェックするように注意しましょう。