映画『スペンサー ダイアナの決意』で強調される「赤」の意味とは? ダイアナ妃の壮絶な人生から紐解く

没後25年、ダイアナ元皇太子妃にとって離婚は、イギリス王室の王妃になる未来を放棄し、自分自身で未来を切り開いていくことでした。大きな決断をした場面を描いた映画『スペンサー ダイアナの決意』が公開されます。

Photo credit:Pablo Larrain
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10月14日より、映画『スペンサー ダイアナの決意』が公開されます。本作で故ダイアナ元皇太子妃を演じたクリステン・スチュワートは、第94回アカデミー賞(R)主演女優賞にノミネートされ、ダイアナが王妃になる人生を放棄し、新しい人生へと踏み出そうとする姿を見事に演じました。また、2度のオスカー受賞歴のあるジャクリーン・デュランが衣装デザインを担当し、シャネルのオートクチュールのイブニングドレスが登場するなど、ファッションも見どころの1つとなっています。
 


1997年8月31日、ダイアナの突然の事故死が報じられ、全世界に衝撃が広がりました。ケンジントン宮殿の前は献花に訪れた人々の行列が続き、9月6日には、準国葬「王室国民葬」が執り行われ、大砲の台車に乗せられたダイアナの棺のすぐ後ろを、チャールズ国王(当時は皇太子)、ウィリアム皇太子(当時は王子)らが歩きました。葬儀の中継の視聴者数は、全世界で25億人と推定され、世界中が悲しみに打ちひしがれました。没後25年となる今も、ダイアナは「史上最も愛されたプリンセス」と称えられています。
 

華やかな結婚、そして離婚。ダイアナ妃が歩んできた人生

Photo credit: Pablo Larrain
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36歳でピリオドを打ったダイアナの生涯を振り返ってみましょう。1979年、エリザベス女王主催のパーティでチャールズと再会したのをきっかけに、皇太子妃候補として注目され、ダイアナ・フィーバーが巻き起こりました。1981年2月24日、婚約が正式に発表され、7月29日、ロンドンのセントポール大聖堂にて挙式。まるでおとぎ話のようなロイヤルウェディングは、全世界で7億5千万人もの人々が視聴したといわれます。

1987年頃から夫妻の住まいであるケンジントン宮殿では、チャールズの不在が常態化し、1992年12月、チャールズ、ダイアナ両者が別居に合意したことが発表されました。1996年8月28日、離婚が成立。2人の王子の親権は両者が平等に持つことになり、ケンジントン宮殿に住み続けることで合意しました。離婚後も王室の一員として、プリンセス・オブ・ウェールズの称号を保持し、地雷やエイズなどに関する慈善活動を通して、社会に大きな変化を起こし、政治さえも動かしました。
 

Photo credit:Pablo Larrain
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20歳で結婚して、6年後には実質的な別居生活が始まり、それから5年後に別居が公式に発表され、離婚が成立するまでさらに4年もの年月を要しました。その間、チャールズ、ダイアナ双方の不倫が暴かれ、私たちはメディアで報じられる新たな事実に驚がくしました。ダイアナにとってチャールズとの離婚は、イギリス王室の王妃になる未来を放棄することであり、自分自身で未来を切り開いていく大きな転換期となりました。
 

離婚を決意をした1991年のクリスマス

本作の舞台は、1991年のクリスマス。不倫や離婚の噂が飛び交う中、エリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに、クリスマスを祝う王族が集まり、ダイアナも12月24日から26日までの3日間を過ごします。
 
Photo credit:Frederic Batier
Photo credit:Frederic Batier


ダイアナは衣装係のマギーには心を許していましたが、クリスマスの行事のために用意された衣装を着用することを拒みます。記念撮影、教会での礼拝など、クリスマスの行事に参加する様子も描かれますが、精神的に追い詰められたダイアナの内面を映し出す陰うつなシーンも多く取り入れられています。

しかし、最後の最後で葛藤から解き放たれ、一大決心をする様子が描かれます。離婚後にダイアナ自身が述べたように、「人々の心のプリンセスでありたい」という新しいビジョンへと導かれるきっかけになったのではないでしょうか。


>(次のページ)映画内で強調される「赤」の意味とは?


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