「やっと仕事が一段落した」などという場合に使う「一段落」という言葉。皆さんは正しい読み方をご存知ですか?
「ひとだんらく」「いちだんらく」と二通りの読み方を聞いたことがあるという人もいらっしゃるかもしれません。
今回は「一段落」の正しい読み方をフリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。
・一段落の読み方は「ひとだんらく」「いちだんらく」どっちが正しい?
・「一段落」の意味と使い方
・「一段落」はなぜ「いちだんらく」と読むのが正しい?
・「一段落」の読み方、7割以上が「ひとだんらく」派【独自アンケート】
・「一段落」の読み方は「いちだんらく」が正しい
一段落の読み方は「ひとだんらく」「いちだんらく」どっちが正しい?
「一段落」を読む場合「いちだんらく」「ひとだんらく」どちらが正しいのでしょうか。
結論からいうと本来の読み方は「いちだんらく」です。辞書にも「いちだんらく【一段落】」として語が採録されています。
では、「ひとだんらく」は辞書でどのように扱われているのでしょうか。いくつか確認してみます。
ひとだんらく⇒いちだんらく
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
ひとだんらく⇒いちだんらく
(『大辞林 4.0』三省堂)
ひとだんらく 「いちだんらく(一段落)」の誤読。
(『大辞泉 第二版』小学館)
※記載なし
(『精選版 日本国語大辞典』小学館)
辞書によっては、見出しのみが採録されているものもありますが、そもそも記載がないものもあります。あくまで「いちだんらく(一段落)」が本来の用語であることが分かります。
また、『大辞泉 第二版』には、「ひとだんらく」の項に「誤読」と明記されていますが、一方で、「いちだんらく」の項には、
「ひとだんらく」と読むのは誤りだが、話し言葉では使われることも多い。
と説明が加えられています。
元々は「いちだんらく」の誤読であった「ひとだんらく」が、話し言葉の中で慣用的に使われるようになり広まったと考えられます。
関連記事:慣用読みとは? 慣用読みの一覧や普及された理由をアナウンサーが解説
「一段落」の意味と使い方
まずは、「一段落」という言葉の意味を確認します。
【一段落】 一つの段落。ひとくぎり。転じて、ものごとがひとくぎりしてかたづくこと。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「段落」という言葉には、文章のまとまりや、物事の区切りという意味があります。これに「一」を合わせた「一段落」は、文章のひとまとまりや1つの区切りという意味になるほか、区切りがついて片付くという意味も表します。
「一段落」はなぜ「いちだんらく」と読むのが正しい?
「一段落」はなぜ「ひとだんらく」ではなく「いちだんらく」なのか、NHK放送文化研究所のWebページ(2019年10月1日公開)に解説があります。
例外もありますが、「漢語+漢語」「和語+和語」と前後で読み方を合わせるパターンが一般的と言えます。「一段落」については、「一」「段落」ともに音読み(漢語)とする「いちだんらく」が伝統的であるという考え方です。
「一」のあとに音読みの熟語が付く語では、他に「一時期」や「一大事」「一目散」などがあり、いずれも「いち~」と読みます。
こうした語と同様に、「段落」という音読みの熟語に「一」が付く場合も「いちだんらく」とする方が良いということでしょう。
一方で、「ひとだんらく」という読みが使われるようになった背景について前述のWebページでは、「一工夫」「一苦労」「一安心」のように、「一」+「音読みの熟語」の中に「ひと~」と読む語も多くあることを指摘しています。
こうした語からの類推で「一段落」も「ひとだんらく」と読まれるようになったのではないかと考察されています。
「一段落」の読み方、7割以上が「ひとだんらく」派【独自アンケート】
All About ニュース編集部では、「一段落の読み方」についてアンケートを実施しました。
その結果、「ひとだんらく」は75.2%、「いちだんらく」は24%、「どちらとも読む」は0.8%となりました。
・「ひとだんらく」派の意見
「ひとだんらくの方がよく聞く気がする」(30代女性/広島県)
「ひとだんらくしたら休憩行きなとかよく言いますよね」(20代女性/岡山県)
「”いちだんらく”とは通常、言わないはず」(50代男性/埼玉県)
・「いちだんらく」派の意見
「『一番目の段落』だと思うので、『いち』が良いのではないかと思うから」(20代女性/山口県)
「通常の一般的な読み方であると思います」(70代男性/千葉県)
「そもそもは、いちだんらく、が正しい。が、昨今はひとだんらく、で使用する人も多いと思う」(50代女性/香川県)
【調査概要】
調査期間:2023年10月20~23日
調査方法:インターネット調査
回答者属性:10~70代の500人
「一段落」の読み方は「いちだんらく」が正しい
「一段落」の正しい読み方は「いちだんらく」です。
「いちだんらく」か「ひとだんらく」か迷った場合は、「一」+「漢語」の場合は「いち~」という原則に従って考えると分かりやすいかもしれません。
また、「段落」の本来の意味である文章のまとまりを数える場合、「ひとだんらく、ふただんらく、みだんらく」とすると違和感があります。「いちだんらく、にだんらく、さんだんらく」の方が自然でしょう。こうした考え方でも覚えやすいかもしれません。
この機会にぜひ、「一段落」の本来の読み方を確認してみてください。