櫻坂46ファンの迷惑行為にファミレスが抗議文……「無断駐車」はどんな罪に問われるのか【弁護士が解説】

8月19日、20日に開催された櫻坂46のライブ「W-KEYAKI FES.2022」。その会場付近のファミレスでファンの無断駐車が相次いだことを受け、店舗が掲出した抗議文がSNSで拡散され物議を醸しました。「無断駐車」について法的観点から弁護士が解説します。

8月19日、20日に、富士急ハイランドコニファーフォレストで開催された櫻坂46のライブ「W-KEYAKI FES.2022」。もともと7月22日と24日に行われる予定でしたが、櫻坂46メンバー複数人の新型コロナウイルス感染を受けて公演を中止していました。その振替公演が8月に開催されたのです。

8月19・20日に開催された櫻坂46のライブ「W-KEYAKI FES.2022」
櫻坂46のライブ「W-KEYAKI FES.2022」の公式サイト(※1)より


そんな中、ライブ会場近くのファミリーレストランが掲出したとある抗議文がSNSで拡散され、物議を醸しました。
 
その張り紙には「櫻坂46のファンへ 金曜はたくさんの無断駐車で営業妨害をしていただきありがとうございました笑――」と書いてあり、ライブに訪れた櫻坂46ファンによる無断駐車が相次いだというのです。
 
この投稿に対してSNSのユーザーからは、「ひどいなこれ。店に関係のない駐車を平気でできる気がしれん」「みんな、気を付けようね……私はもちろんしないけど」「店側の気持ちは察するに余りあるよね」などの声が寄せられています。
 
そもそも無断駐車とは何なのか。また、もしも無断駐車をしてしまった場合にはどのような法律に抵触するのか……。法的観点から弁護士である筆者が解説します。
 

そもそも「無断駐車」って何? 無断駐車をしたらどんな罪に問われるの?

「無断駐車」とは、公道や私有地などの場所を問わず、その場所に停める権利も同意もなく、駐車することを言います。ただし、公道の場合には主に「路駐」「路上駐車」という表現を用いるので、一般的に「無断駐車」と言うときは私有地への駐車を指している場合が多いでしょう。また「駐車」と言うことから、車を停めた(駐めた)状態がある程度の時間継続することも含んでいます。
 
また、法的には、家や建物の駐車場に無断駐車をした場合、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立することがあり得ます。しかし、月極駐車場などの場合ですとこれらの罪は成立しません。出入り口をふさいで駐車場業務を妨害するといった態様でしたら、威力業務妨害罪が成立することもあるでしょう。
 

駐車場の警告文「無断駐車をしたら罰金〇〇万円」は、法的に有効?

駐車場で「無断駐車をしたら罰金〇〇万円」などという看板を見かけることがありますが、まず罰金というのは、犯罪をしたときの刑罰の1つです。土地の管理者が刑罰を科すことはできませんので、罰金という表現は本来妥当ではありません。「無断駐車をしたら無期懲役です」と書いてあると違和感がありますよね。なので、ここで言う罰金というのは、損害賠償金という意味で書かれているものだと考えられます。
 
次に、実際にこの警告文が法的に有効かという問題ですが、一般的には法律上の効力はないと考えられています。「罰金〇〇万円」という表示は、無断駐車をした場合の損害賠償金を法的に約束させるものですが、無断駐車する側がその約束に応じておらず、約束(合意)が成立していなないからです。

ここからはあくまでも筆者の私見ですが、絶対に見逃さない場所と大きさで「罰金〇〇万円」と表記しておいたら、それを読んで合意した上で駐車したと言えそうですし、「1時間1万円」と高額の駐車代金として表記すれば料金を知らなかったとは言わせないことができるように思います。
 
いずれにせよ、駐車場で見かける警告文に法律上の有効性がないとしても、無断駐車をしていい理由にはならないので、注意してください。
 

もしも無断駐車に遭遇した場合、まず私たちはどう対応するべき?

まず、警察に通報することが思い浮かびます。犯罪が成立する無断駐車でないと民事不介入ということであまり対処してもらえませんが、所有者に連絡を取り注意してくれることもあるようです。車体部が公道にはみ出ていると警察が動いてくれやすいです。
 
なお、私有地内の無断駐車ですと、自分でレッカー業者に依頼して撤去したり、タイヤロックをしたり、車の前をふさぐように駐車して動けないようにしたりする手段は違法となる可能性が高いので注意が必要です。

そのため、車を傷つけず、利用できる状態のままに対処する方法を考えることになります。具体的には、ワイパーに警告文を挟んでおく方法が無難です。

残念ながら、それでも無断駐車が繰り返されることはあり得ます。そうすると所有者を調べて損害賠償請求をする(場合によっては裁判を起こす)ことになります。しかし、無断駐車“された側”が、諸費用を負担しなければなりません。無断駐車をされた側のデメリットがあまりにも大きい反面、無断駐車をした側のリスクが小さく、極めて理不尽です。
 

鬼沢 健士プロフィール
弁護士。慶應義塾大学経済学部卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。司法修習を経て、東京弁護士会に弁護士登録。平成24年に茨城県取手市に「じょうばん法律事務所」を開設。


参考
※1:「W-KEYAKI FES.2022」公式サイト(https://sakurazaka46.com/s/s46/page/w_keyaki_fes2022?ima=3430

 

>次ページ:実際の抗議文を見る
 

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