青春時代に流行った音楽がふとしたタイミングで耳に入り、憧れの人に思いを伝えたドキドキがよみがえってくる……というように、思いがけないタイミングで甘酸っぱい思い出が胸をよぎることもあると思います。
このように(ちょっとやりすぎでしたが)、私たちが日頃書く文章や会話の中には「おもう」という言葉がよく登場します。
そしてこの「おもう」という表現、「思う」と書くだけでなく、「想う」と書かれている場合もあります。今回は「思う」と「想う」、2つの「おもう」の違いについて解説していきます。
<目次>
・「おもう」の意味とは
・「思う」と「想う」の意味の違い
・「思う」と「想う」の表記の違い
・「思う」と「想う」の例文
・その他の「おもう」の漢字
・「思う」「想う」の使い分けに注意
「おもう」の意味とは
「おもう」とは、心の中にさまざまな考えや気持ちをもつことを広く表す言葉です。
国語辞典では「思う」も「想う」も、同じ「おもう」として記載されています。意味は次の通りです。
1. ある物事について考えをもつ。考える。
2. 眼前にない物事について、心を働かせる。
3. 願う。希望する。
4. 心にかける。心配する。気にする。
5. 慕う。愛する。恋する。
6. ある感じを心に持つ。感じる。
7. 表情に出す。そういう顔つきをする。
引用:「大辞泉 第二版」(小学館)
かなり細かく分けられていて、普段何気なく使っているさまざまな「おもう」がどれに当てはまるのかピンときにくい部分もあるかもしれません。
「思う」と「想う」の意味の違い
「思う」とは、自分の頭の中で考えることや意見を持つことを指します。一方、「想う」とは、感情や感じることを表現することを指します。つまり、「思う」は論理的な思考や意見を表すのに対して、「想う」は感情や直感を表現するのに使われます。
ただし、「想」は、「構想」「着想」などの熟語があるように、「考え」や「アイディア」という意味もあります。情感以外に使うのは間違いというわけではなく、あくまで、慣用的には気持ちを込めた表現に使われる傾向が強いということでしょう。
「思う」と「想う」の表記の違い
意味の違いとは別に、「思う」と「想う」には、常用漢字表に載っているかどうかという違いもあります。
常用漢字表というのは、公用文などを作る時に推奨されるような、誰にでも伝わりやすい一般的な漢字表記の目安をまとめたものです。
この常用漢字表で、「おもう」という読み方が記載されているのは「思」のみで、「想」の読み方には音読みの「ソウ」しか載っていません。
ビジネス文書などの場合、意味によって漢字を使い分けるのではなく、公用文にならって常用漢字の「思う」を使う方がよいかもしれません。
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「思う」と「想う」の例文
「思う」と「想う」の意味の使い分け方を例文と一緒に解説します。
前述した通り、基本的には「おもう」は「思う」と表記するのが一般的ですから、以下の例文で「想う」としたものでも、「思う」と書いて差し支えありません。
・「思う」の例文
・思ったことがそのまま口に出てしまう。
・すべてが思い通りにいくとは限らない。
・思いのほか良い仕上がりになった。
・「想う」の例文
・彼女と彼は互いに想い合っている。
・子を想う親の心。
・故郷に想いをはせる。
その他の「おもう」の漢字
最後に、「思う」や「想う」以外に「おもう」と読むさまざまな漢字表記について見ていきます。
・「念う」
強く気持ちを込めること
・「憶う」
胸の内で考えること
・「惟う」
よく考えること
・「懐う」
考えや気持ちをもつこと
それぞれ、違ったニュアンスをもつようですが、これらの漢字を正確に使い分けるのは非常に困難です。
また、こうした表記は、一般的に「おもう」と読んでもらうのが難しいとも考えられますので、参考程度にとどめていただいて、基本的には「思う」(場合によっては「想う」)を使うことをおすすめします。
「思う」「想う」の使い分けに注意
日常会話でもよく使う「おもう」という言葉。人間は複雑な心をもつ生き物ですから、「おもう」内容もさまざまです。漢字で表す場合には、一般的には「思う」と書き、より情感を込めたい場合などには「想う」とすると、より一層「おもい」が伝わりやすくなるのではないでしょうか。