熟年夫婦がグリーン車乗り放題で行く優雅な旅。旧国鉄時代の1981年に登場した「フルムーン夫婦グリーンパス(通称:フルムーンパス)」が販売終了となった。
例年、8月下旬に10月から翌年6月までの販売予定がリリースされていたのだが、2022年はなかった。関心ある人やメディア関係者がJR各社に問い合わせたところ今後の販売予定はないことが判明。去る6月末までの利用をもって静かに幕を下ろしていた。
フルムーンパスに代わるきっぷはあるのか、また、「青春18きっぷ」はどうなるのか。
第2のハネムーン、フルムーン旅行という夫婦旅の提案
1981年に登場したフルムーンパスは、当時の人気俳優・上原謙と高峰三枝子が熟年夫婦を演じ、旅先の温泉に浸かっている何とも妖艶なCMが話題となった。フルムーンという言葉も注目を浴び、第2のハネムーンという意味合いで「フルムーン旅行」という表現が使われるきっかけとなった。
上原謙と高峰三枝子のカップルのイメージは高齢者の旅行というイメージが付きまとったが、実際のフルムーンパスは2人の年齢合計が88歳以上なので、44歳同士のカップルでもOK。49歳と39歳の組み合わせでも可能なので、決して高齢者専用のパスではなかった。近年、「大人の休日俱楽部」など50歳以上限定のおトクなきっぷが一般的となっている中、フルムーンパスは40代以下でも利用可能なパスだった。むしろ、1990年代のCMに登場した加山雄三(当時50代後半)と松本めぐみのカップルのほうがイメージとしては合っていたように思う。
国鉄(のちにJR)のグリーン車乗り放題という贅沢にもかかわらず破格の値段で利用できる実におトクなパスだった。発売当時は新幹線の最優等列車は「ひかり」で、そのグリーン車に乗り放題だったが、その後登場した「のぞみ」は、このパスでは乗れない列車になった。
「のぞみ」の列車本数が少ないうちは特に気にもならなかったが、時代とともに「のぞみ」の本数が増え、「ひかり」が少数派になっても、この制度が変更になることはなかった。「のぞみ」に乗りたいなら、特急券のみならず乗車券も別途購入しなければならない。九州新幹線が全通して「みずほ」が走り始めると、「みずほ」も適用外となった。こうして、グリーン車乗り放題とは言っても、例外が存在したのである。