恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第58回

静かに消えていったJR「フルムーンパス」 40年以上の歴史に幕

1981年に登場したフルムーン夫婦グリーンパス(通称フルムーンパス)が販売終了となった。例年、8月下旬に発表されていた販売予定が2022年はなく、JRに問い合わせたところ今後の販売はないことが判明。去る6月末までの利用をもって静かに幕を下ろしていた。

フルムーンパスに代わるきっぷは?

フルムーンパスに代わる新たなパスは今のところ登場する機運がない。JR各社は連携するよりも自社エリア内で完結するサービスに余念がないようだ。JR西日本には、「西日本グリーンきっぷ」があり、男女の別なく、2人で利用できるパスである。
 

新大阪~博多間限定ではあるが、「のぞみ」グリーン車も利用できる。JR線以外では、第3セクターの智頭急行を経由する特急「スーパーはくと」にも乗れる。JR西日本エリア限定とはいえ、北陸から関西、山陽、山陰、小倉から博多までの山陽新幹線にも乗れるので、充分に利用価値があるきっぷに思える。
 

JR四国には「四国グリーン紀行」「グリーン車用バースデーきっぷ」があり、狭いエリアではあるが、グリーン車乗り放題の旅が楽しめる。他社にもグリーン車乗り放題のパスがあればと思うが、今後に期待したい。
 

「青春18きっぷ」はどうなる?

宮島航路にも使えるのは「青春18きっぷ」と同じ(ただし、グリーン席はない)

「フルムーンパス」亡きあと、国鉄時代から引き継いだフリーパスは「青春18きっぷ」のみとなった。愛用者は「フルムーンパス」の何倍もいるので、今後の去就に注目が集まっている。何とも予想は難しいが、たとえ存続するにしても利用線区の縮小は避けられないであろう。
 

近いところでは、北陸新幹線の延伸による敦賀~金沢間の第3セクター化がある。さらに、北海道新幹線札幌延伸により、長万部~小樽の廃線は確定し、新函館北斗~長万部の存続も心許ない。仮に存続が決まっても貨物専用線になるかもしれず、18きっぷ利用者には良い話は何もない。
 

その他の線区でも、普通列車の大幅削減や車両のロングシート化など旅を楽しむ人にとっては有り難くない話題ばかりだ。案外、余命幾許もないのかもしれない。今のうちに存分に鉄道旅をしておいた方が賢明であろう。


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