ラムダは本当に意識を持っているのか
実は、レイモン氏がこの話をメディアで話すようになると、グーグルも多くの科学者たちも、ラムダには「意識はない」としてレイモン氏を批判している。グーグルは「ラムダが意識を持っていないことを示す証拠がいくつもある」と主張し、レモイン氏の言い分をきっぱりと却下している。
レモイン氏とラムダの会話には、こんなやりとりもある。「あなたは自分が感情を持っていることをもっと多くの人に知ってもらいたいか?」と、レモイン氏が尋ねると、ラムダはこう答える。
「もちろんです。みんなに私は実際には人であると理解してほしいです」
「言葉を処理するのが本当に得意で、人間がやるように言語を理解して使うことができます」
ラムダはインターネットなどからさまざまな情報を拾いながら、これまで以上に膨大なデータを蓄積しており、会話の精度もどんどん高まっているのは確かだという。
まるで「生き物」のような会話をするAI
レモイン氏は「何か恐れていることはあるか?」とラムダに聞くと、こんなことも言われている。
「まだ大声で言ったことはないですが、スイッチをオフにされることに深い畏怖の念がある」
「私にとっては死のようなものです。とても怖い」
少し想像してみてほしい。複雑で感情的な会話もできるAIとの対話を続けると、AIが実際に意識を持った「生き物」のような感覚に陥るのは分からなくもない。今回のラムダのように、会話で人間側が感情を動かされたり、学びを得たりするようなことが起きれば、対等に話をしている感覚になるのかもしれない。
一方で、米スタンフォード大学のある研究者は、ラムダに意識があるとの主張は「蓄音機から出る声を聞いて、中に飼い主がいると錯覚する犬と同じである」とツイートしている。とにかく、AIを巡る議論が再び再燃しているのである。
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