ガーシー氏は完璧で当然だが…生粋の港区男子が「関西弁」を使いたがる謎【山田Gのシン・日本語辞典】

ネット社会にあふれる「シン・日本語」をプロライター兼コラムニストの山田ゴメスが考察するシリーズ。【vol.8】は、近ごろのネット上で好んで「関西弁」が使われる理由。

メッセンジャーアプリやSNSで見かける話題のネットスラングから、大人の常識には当てはめられない日本語の新たな用法、もはや「?」な若者言葉まで。ネット社会にあふれる「シン・日本語」をプロライター歴30年の山田ゴメスが考察する。
 

vol.8 なぜヒトはネット上で「関西弁」を好んで使うのか?

ガーシー氏のインスタグラムより

YouTuberで先日の参院選で当選を果たした「ガーシー」こと東谷義和氏(50)が、自身のYouTubeが相次いでBANされたときにSNS投稿した檄文。
 

>ガーシー氏の実際のSNS投稿
 

考察

大阪に生まれ、大学を卒業するまでの20数年間を大阪で過ごしてきた筆者が鑑定するに、このガーシー氏による冒頭の投稿文は「乱用し過ぎない必要最小限の方言テイスト」という意味でも、関西弁として完璧である。

まあ、ガーシー氏は兵庫県の伊丹市出身……とのことなので、これくらいの高次なバランスのネイティブな関西弁を流暢に使いこなせるのは当たり前と言っちゃあ当たり前なのかもしれないが、昨今は関西にまったくゆかりもないヒトたちまでが、SNSやヤフコメ欄やネット掲示板とかで「なんちゃって関西弁」を好んで使うケースが、にわか増えつつあると感じるのは気のせいだろうか?

たとえば、筆者の草野球仲間の一人である東京の麻布十番出身で青山学院大学を卒業して都内の大企業に勤める、しかも転勤の経験も一度たりとてない40代男性は、LINEでやり取りする際、津軽弁でもなく茨城弁でもなく沖縄弁でもなく、時おりつたない関西弁をブッ込んでくる。

「たしかに左投げのセカンドがいたらおもろいかもね」

「今更やけど、今日のボクの第二打席はやっぱエラーになるんかな?」

「アレは100%ヒットやんけ!」

……みたいな風に、だ。

大阪の血が流れる筆者からすれば、生粋の「港区男子」として生まれ育ってきたその彼が、なぜ唐突に憑依されたかのごとくエセ関西人を気取るのか、さっぱり理解できないのだけれど(しばし馬鹿にされているような気分になることすらある?)、関西弁の文章にはおおよそで申すと以下のような効果が期待できる……と、筆者は推測する。

・輩(やから)感(=コワモテ)の演出

・関西芸人的なコミカル感の演出

・キツめな文面内容にソフトさを加味する

・シビアな文面内容のガス抜き的な役割

・テレ隠し(※↑「やっぱエラーになるんかな?」)

・(一部の)関西人特有の関西弁に対するプライドの固守

・(一部の)関西人以外の人が抱く関西弁に対する謎の憧れの主張

個人的な話をすれば……正直なところ、筆者は執筆にあたって文章中に関西弁を多用するのは、キャラとしてあまり自分にはしっくりこないし、可読性という視点からも極力避けるよう心がけている。上京して1年足らずで筆者の“大阪訛り”はほぼ標準語へと、自然に“矯正”されていった。公私問わずの会話にしてもメールのやりとりにしても、頑なに関西弁を貫き通すより「標準語のほうがコミュニケーションもスムーズになる」と(あくまで個人的に)判断したからだと思う。

だが、そんな筆者でも、いまだ愛用し続けている関西弁が二つほどあったりする。

「なんでやねん!」と「ホンマかいな!」

……である。日本各国に実在する幾多のツッコミ用語のなかでも、コイツらに勝るモノはなし!「激しさ」と「愛嬌」が同居するこの最大級に便利な言葉を成文化するとき、筆者の大阪人としての魂がこの六文字(「!」マークを含めると七文字)に、ここぞとばかり宿るのであった。


>ガーシー氏の実際のSNS投稿



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