メッセンジャーアプリやSNSで見かける話題のネットスラングから、大人の常識には当てはめられない日本語の新たな用法、もはや「?」な若者言葉まで。ネット社会にあふれる「シン・日本語」をプロライター歴30年の山田ゴメスが考察する。
 

vol.3「〜させていただく」……若者からいい大人まで乱発するトレンド語?


「~させてもらう」の謙譲語。本来は、

・相手または第三者の許可を得ているかどうか
・そのことで自分自身が恩恵を受けるかどうか


……の2つの条件を満たす場合に使用するのが正しいとされている。ところが、昨今はビジネスシーンからプライベートに及ぶまで、この「~させていただく」を、二重三重の敬語になることもいとわず、乱発する若者が急増中……というのだけれど???
 

誤用例

「このたび司会を務めさせていただく◯◯と申します」(※結婚式にて)
→(正)司会を務める

「ワタシ△△は来年3月でAKB48を卒業させていただきます」
→(正)卒業します

「××さんとは半年ほど前からお付き合いさせていただいてます」(※熱愛が発覚した芸能人の記者会見にて)
→(正)お付き合いしています

「朝から熱が38度あるため今日は欠勤させていただきます」
→(正)欠勤します・欠勤いたします
(※病気になってしまったら、会社の許可うんぬん以前に欠勤せざるを得ないため、ここまでへりくだる必要はない…という解釈)
 

考察

冒頭では「乱発する若者が急増中」と書いたが、実際には「若者」どころか「イイ大人」──しかも“言葉のプロ”であるはずの政治家やアナウンサーまでもが、以下のように誤用しているケースも、けっこうな頻度で見られる。

「代表を務めさせていただいております◯◯と申します」(※某選挙演説にて)
→(正)代表を務める

「質問させていただきます」(※某国会答弁にて)
→(正)質問します

「この事業は中止とさせていただきます」(※某大臣の記者会見にて)
→(正)中止といたします

「それではいただかさせていただきます」(※局アナが出演する某料理番組にて)
→(正)いただきます

「いまから召し上がらさせていただきます」(※局アナが出演する某ニュース番組の食レポにて。もはや日本語としてもおかしい)
→(正)遠慮なく頂戴します

ただ、vol.1の「彼女さん」(=過剰な「さん」付け)同様、

「とりあえず、言葉を“より”丁寧にしとけば、上下が発生したり浅かったりする人間関係も円滑になるし、人様からお叱りを受けることもないだろう」

……といったディフェンシブなメンタル作用がおのずと働き、つい二重にも三重にも丁寧語を重ねてしまうその心情は理解できなくもない。(※ちなみに、「誤用」として前記した「司会を務めさせていただく」は「プレゼンテーションの聴き手を最大限に尊重するための表現」として許容される場合もある……らしい)

いったい、いつの間に日本人はこうも“ビビり”になってしまったのか? 筆者は、おおよそ以下に挙げる3つの理由があるのでは……と推測する。

(1)たとえば、「朝から熱が38度あるため今日は欠勤します」との報告を受ける側が正しい使用法を知らず、「病欠するくせにつっけんどんなヤツだな! せめて『病欠させていただきます』くらい言えねえのかよ!!」と、的外れな怒りを買ってしまう危険性もなくはないから。(※←より「『させていただく』の使い方、間違ってるぞ!」と叱られる可能性のほうが低そうだから)

(2)メールやLINEほか、現代人は文章を書く機会が圧倒的に増えているため(=文章のやりとりがスピード重視のチャット調になっているため)、逆にチェック能力が衰えてきている。

(3)インターネット社会やコロナ禍における、リアルな対面型コミュニケーションの希薄化によって、当たり障りのない会話口調が好まれるようになってきた。

筆者個人としては、これはもうあらがうことができない、ある種の“トレンド”みたいなものだと考える。

だが、せめて政治家やアナウンサーや、筆者のように“言葉を操る職”に就く者たちだけは、その誤ちを正す役割を担うためにも、ただやみくもな文言をしゃべり散らかしたり書き散らすだけではなく、自身の“普段の仕事”に対する校正作業を怠らないように「させていただかねば」ならないのではなかろうか。


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