K-POPアイドルのソロ活動と“働き方改革”
矢野:BTSもソロ活動に入ると宣言しましたし、TWICEのナヨンもソロデビューしました。ゆりこさんはK-POPアイドルのソロ活動について、何か思うことありますか?
ゆりこ:私は賛成派です。オルペン(箱推し)からすると全員そろってこそ、という気持ちも否定できないですが。ソロ活動は個々の強みが一気に花開きますし、知らなかった一面が垣間見えたりして面白いんですよ。
矢野:なるほど! それぞれパワーアップしたメンバーが再び集まったら最強ですよね。ただ、ソロ活動はアーティスト生命を延ばすための戦略とも言える一方で、グループとしての活動が減ってしまって勢いが落ちたりする心配もありませんか?
ゆりこ:確かに、ある程度の知名度と人気を確立するまではグループ一丸となって突き進んでいく方が効率的かもしれないですね。まさにBTSはその方向で成功しています。Vがドラマに出演したり、SUGAがAgust D名義で音源を出したりしていましたが、知名度やキャリアから考えるとソロ活動は少なかったですね。でも、逆のパターンもあって最初はグループとして芽が出なくても、メンバーがソロで成功し、有名になることでグループ全体の知名度が上がることも。
矢野:何組か思い浮かびました。ソロ活動が上手く行っても、イマイチ結果が残せなくても「やはりグループでしかできないことがある」と再認識する機会になるでしょうね。ただ僕は「ソロで上手く行ったら独立したくなるのでは?」とも思ってしまって。実際に俳優や女優としての活動を本格化させるために、元の事務所との再契約をせず俳優中心の事務所へ移籍してしまうケースもありますよね?
ゆりこ:独立問題……うっすら脳裏をよぎるのも事実です(苦笑)。もしもいつかグループが解散してしまっても芸能活動を続けられるように、歌手や作曲家、役者として専門的な経験を積んでおきたいというのも理由の一つでしょうね、ソロ活動の。K-POPには「7年目のジンクス」という言葉がありますから。
矢野:7年目に解散したりメンバーが脱退したりするグループが多いっていう話は聞いたことがあります。そもそも何がきっかけなんでしょうね。年月を経て個々の目指すものが違ってくるのは自然なことだとも思いますけれど。
ゆりこ:はい、実は韓国の公正取引委員会が定める芸能人の契約標準規定が「最長7年まで」となっているんです。ほとんどの事務所がこのルールに従っています。10年以上前に遡るのですが、当時の東方神起メンバーの訴えをきっかけに「アイドルの長期契約」が社会問題として表に出ました。いわゆる「奴隷契約」というものです。デビュー時に交わされた契約はアーティストサイドにとって不利なことも多い。なので7年以内に再交渉するタイミングを作ろう、となったわけです。
矢野:なるほど。今回のBTSもそうですがトップアイドルが自ら声を上げて「働き方改革」をしてきたってことですね。
ゆりこ:トップクラスじゃないと言えない、なかなか変えにくい部分もありますよね。そしてK-POPビジネスの成功の裏には、アイドルとスタッフの「激務」があったことも否定できないと思います。
矢野:皆がゆるっとマイペースに進めていたら、今の世界的な人気と熱狂はなかったかもしれないですね。ただ、また過渡期が来ているように思います。K-POPが一過性のブームで終わらなかったのも変化を拒まなかったからこそですし。
ゆりこ:「変化を拒まなかったから」まさにそうですね。そういえばBTSも防弾少年団としてすでに人気が出てから改名していますが、初めは「今さらナゼ?」と思ってしまったのも事実。でも結果は……言うまでもないです。
矢野:アーティストや業界全体がまだまだこれからも変化していくでしょうし、今はまだ進化の途中なのだと思っています。ちなみにゆりこさんが「ここ数年で変わってきたな」と思うことはありますか?
ゆりこ:そうですねぇ……あぁ、さっきの「7年のジンクス」の話。最近の流れで言うと事務所を離れてもグループメンバーとしては残るケースが増えています。2PM、GOT7、そして最近カムバックした少女時代もそうですね。全員が同じ会社に所属していなくても、いざとなると集まれる状態にしているという。本人とファンにとっての「帰ってくる場所」「ベースキャンプ」としてグループを守っていこうとする想いが感じられます。
矢野:推しのグループがずっと一緒にいてほしい、というのはファンの願いですよね。長寿グループが増えることでK-POP全体の層が厚くなりますし、カルチャーとしてもより成熟していくと思います。
#1はここまで! 次回は「K-POP×SNS」について取り上げていく予定です。お楽しみに!
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウォッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いたのち、ソウル生活を経験。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)。
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