BTS・RMの発言から考える、K-POPアイドルの「働き方改革」と「ソロ活動」【K-POPゆりこの沼る韓国】

M世代の韓国エンタメウォッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったトピックについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。#1はK-POPアイドルの「働き方」と「ソロ活動」をテーマにお届けします。

K-POPアイドルとファンは常に全力疾走!?「ブレイク(小休止)」の必要性


矢野:僕も「バンタン会食」を見たのですが、最初は韓国語で何を言っているのか分からなくて。でも、ただならぬ空気感は感じました。あとで日本語の記事を読んでびっくりしました。かなり赤裸々だなって。事務所が配信を止めなかったのも意外でした。というか、あのコンテンツを編集して配信しているのは事務所ですよね。涙ながらに語る7人の姿に衝撃を受けたのは僕だけではないはず。一方で、ここまできちんと本音をファンに語ってくれるんだな、という信頼感も生まれました。

ゆりこ:私もリアルタイムで見ていて、途中でちょっと頭が真っ白になりました。「あれ?どういう意味なの?」と。Twitter上でもいろんな見解が飛び交っていましたしね。今はちょっと落ち着いてよかったなと。過去に有名人が年月を経て「あの時は限界を感じていた」「実は解散危機だった」など思い出話として暴露することはあっても、リアルタイムで状況を公開するケースってなかなかないですよね。どこまでも誠実というか、ARMY(ファン)に理解してもらおういう想いが伝わりましたよ。

矢野:同感です。そして「バンタン会食」をきっかけに、純粋な疑問というか知りたいことが出てきまして……。まず気になったのは、RMの「K-POPアイドルのシステムは人間的に成熟させてくれない」という発言です。BTSの大きな成功の裏で、韓国のアイドルたちがこれまで見せないようにしてきた、そして業界全体が見て見ぬふりしてきた課題があるのかもしれないなって。


ゆりこ:その発言はさまざまな記事にもなっていましたよね。RMの言葉が示唆するものは、一つじゃないと思うのですが……基本的にK-POPアイドルの道はデビュー前から多忙です。しかも成功すればするほど過重労働サイクルが止まらない。練習生になった瞬間から日々たゆまぬレッスンとライバルたちと競い合う日々を送り、デビュー後はすぐに他社の同期グループとの新人賞争いがあります。さらには先輩グループや続々と出てくる後輩グループにも負けてはいられない。つまり、これまでのK-POPアイドルやその志望者たちは体調不良など大きな理由無しに「立ち止まる」ことが難しかったんですよね。そこに「デビューが遠のく」「スター街道からの離脱する」危険性を感じていたんでしょう。

矢野:なるほど。なんだか、会社員の僕でもその気持ちはわかる気がします。就活して就職して、同期や先輩に遅れをとるまいと毎日働いて、そんな中で理由なく長期で有給くださいって……なかなか難しいです。多くのファンを持つアイドルだったら、なおさらですよね。

ゆりこ:はい。K-POP業界はずっと戦国時代みたいな状態が続いていると思うんです。その時々で天下をおさめる“覇者”のような存在はいますが、絶えず新しいグループも出てきます。スキルも才能も持った若い子が。事務所としてはファンが待ってくれている間に「カムバック(新譜リリース)」をしてつなぎ止めておきたいという心理が働くのも自然なことです。ファンとしては「そんなにすぐ忘れないから大丈夫だよ」って言いたいですが。

矢野:ですよね! あと、僕は「カムバ(カムバック)」という文化も独特だなと思っていて。単なる新曲リリースじゃないなと感じています。何だか特別なお祭り感がありますよね。アイドルから提供されるコンテンツもどどっと増えますし、ファンの気合もすごい。推しの活動を盛り上げよう、チャート1位を獲らせようと頑張りますよね。

ゆりこ:まさにファンダムの力の見せ所と言えます。アーティストもファンの声援に応えようと活動期間は休みなくテレビに出演し、SNSなどオンラインでのイベント、新型コロナウイルス以前はサイン会などリアルイベントに奔走します。その期間はだいたい2~3週間ぐらいですかね。さらに! 韓国の音楽番組って日本より多いんです。月曜を除き、毎日どこかのTV局で『Mステ』みたいな番組を放送しているようなイメージですね。事前収録も増えてきていますが、かといってアイドルたちの負担は減らない。それを追うファンも気力、体力、そして財力も必要になります(笑)。

矢野:いやぁ、20代でもなかなかしんどいですね。連日いろんなTV局を行脚してパフォーマンスするなんて。その後しっかりのんびり休めるかというと……それは違うわけで。次の制作やレコーディングが始まっちゃったりして。

ゆりこ:それも人気が出るほどその規模が「海外の番組出演」「ワールドツアー」などどんどん大きく膨らみますからね。もちろん、その経験の中で人間的に成長できる機会は沢山あると思いますが……RMがあえて「成熟する機会がない」と強めの表現で発言したのは、自分たちだけでなく後に続く後輩たちのためにも「変化」を起こすためだったのかもしれない。

矢野:あの言葉は国内外のエンターテイメント業界にいる大人たちにも刺さったんじゃないでしょうか。アウトプット量がインプット量を超えてしまうと、自分の中のエネルギーや創造力が枯渇していく感覚に陥るのは分かる気がします。ただ休暇をとって、寝て過ごしたいということじゃないんですよね。自分の本当にやりたいことをやる、考えをまとめて整理する、という能動的なブレイクも不可欠ですし。

ゆりこ:ソロ活動も「能動的なブレイク」なのかもしれませんね。

>次ページ:かつては東方神起の奴隷契約問題も。K-POPアイドルのソロ活動と“働き方改革”

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