「佐野ラーメン」の栃木県佐野市では、市が「ラーメン職人」を養成している? 実際に確かめに行ってきた

「佐野ラーメン」は、ご当地ラーメンの1つ。市内には150もの佐野ラーメン店がありますが、佐野市では「佐野ラーメンの職人を養成する」ことを目的に、「佐野らーめん予備校」という施設を運営しています。民間ではない市による珍しい取り組みをご紹介します。

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「佐野らーめん予備校」出身者が佐野市内にオープンした「佐野らーめん 佐よし」の人気メニュー

関東のご当地ラーメンの1つ「佐野ラーメン」。戦前から栃木県佐野市に根付いたラーメンで、青竹を使って打ったちぢれ麺、透き通っていながらもコク深いスープが特徴で、1度食べるとかなりヤミツキになるものです
 

市内には150もの佐野ラーメンを出すお店がありますが、そんな中、「佐野ラーメンの職人を養成する」ことを目的に、佐野市が「佐野らーめん予備校」という施設を運営しているとのうわさを聞きました。民間ではない市が、ご当地グルメの職人を養成する取り組みを行う例はあまり聞いたことがありません。このうわさは本当なのでしょうか? 実際に佐野市に出向き確認してきました。
 

佐野市役所すぐそばにある「佐野らーめん予備校」

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佐野市役所からすぐの場所にある「佐野らーめん予備校」

佐野市の中心部にある佐野市役所。そこから徒歩1分もかからない場所に「佐野らーめん予備校」の看板が掲げられた黄色い施設がありました。中からは「カッカッカッ」という、青竹で麺を打っている音が聞こえてきます。
 
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「佐野らーめん予備校」の中では確かに麺と向き合う人が!

恐る恐る店の中を尋ねると、複数の人たちが厨房でスープの味見をし、また麺打ちスペースでは先ほどの音の通り、寡黙に麺を打ち続ける人がいます。その様子は真剣そのもので、話しかけるのもはばかられるほどでした。
 
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厨房ではスープの味見をする人も


確かに「修行の場」「ラーメン職人養成の場」であることはよく分かりましたが、こちらは、本当に市が運営しているものなのでしょうか。佐野市役所にも問い合わせしてみることにしました。
 

当初は賛否両論あった運営。しかし、今では「活性化につながっている」と賛成の声も

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今では地元の人たちも好意的に捉えるようになった「佐野らーめん予備校」


改めて佐野市役所に「『佐野らーめん予備校』は佐野市が運営しているのですか?」と問い合わせたところ、「はいそうです」と回答を得られました。また、施設はレンタルでしたがプロジェクトは市が運営していることに間違いありませんでした。
 

さらに聞くと、佐野市にとっての「佐野ラーメン」は大切な資源であり、数多くあるラーメン店は財産。将来にも守り続けていくために、「佐野ラーメン」の後継者育成と、移住希望者にとって課題となる仕事探しの2つをマッチングさせて立ち上がった移住プロジェクトとのこと。
 

これらは国の地方創生推進交付金を活用した佐野市の事業ですが、プロジェクト設立当初は「佐野ラーメンだけに特化しているのはおかしい」「既存店の売上が落ちてしまうのでは」といった意見もあったそうです。
 

しかし、実際に「佐野らーめん予備校」出身者が佐野市内にラーメン店を開店したケースも、複数出ています。これらの事例が実現すると、「佐野ラーメンを通した市全体の活性化に繋がっている」「成果が出ている」といった賛成も多く、今では「ラーメンの街」佐野市ならではの有意義な取り組みとして好意的に捉える人が増えてきたとのことです。
 

ラーメン作りの技術、歴史認識や店舗経営の知識、移住サポートまでの手厚いカリキュラム

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ラーメン作りの技術だけでなく、法律や経営の座学も学びます


市の取り組みとしてかなり面白いと思いましたが、肝心の「佐野らーめん予備校」のカリキュラムの中身は想像以上に濃いものでした。
 

まず「基礎研修」は約2カ月、全9回のプログラム。現役の「佐野ラーメン」のお店を営む店主らによる、「佐野ラーメン」作りの基礎的な調理レクチャーを受けながら、「佐野ラーメン」の歴史や「食品衛生責任者」「食品営業許可」といった飲食店経営ならではの座学などを学ぶそうです。もちろん、経営上の資金繰りなどに伴う事業計画書の書き方や、国や自治体の助成金・補助金の種類や申請方法なども、中小企業診断士など専門家を招き細かく学ぶとのこと。
 

「基礎研修」を終えると、次は「本格修行」に入ります。既存店で修行する場合は、マッチングしたお店で働きながら、その店の技術を学びます。一方、早期独立を考えている人には、「佐野らーめん予備校」などで、講師陣の指導を受けながら独学で、さらに深いラーメン作りの技術を学ぶのだそうです。
 

これらと並行し、佐野市では移住サポートとして、家族構成・働く予定先店舗の場所を考慮した住宅の紹介なども不動産事業者と連携して行い、さらに小さな子どもがいる場合は子育て支援などの手続きもサポートするという徹底ぶりのようです。
 

将来的には佐野市の事業ではなく、「佐野らーめん予備校」が自走する事業を目指す

この「佐野らーめん予備校」には移住すること以外に条件がないため、さまざまな人から受講の問い合わせがあるようですが、佐野ラーメンは青竹による麺打ちなど、力仕事が多いこともあり、気力はもちろん体力に自信のある人を推奨しているそうです。
 

最後に、佐野市役所の担当者に「佐野らーめん予備校」の今後の展望について聞きました。
 

佐野市役所・担当者:「佐野らーめん予備校」は将来的に佐野市の事業ではなく、自走化を目指していきたいと考えています。そのためにも予備校受講生に寄り添った研修メニューの研究を行い、継続的に受講生を増やしながら、佐野市の大切な資源である佐野ラーメンを盛り上げていきたいと思っています。自走化するためには収入の確保も必要ですので、佐野らーめん予備校ならではの商品開発を行い、販売などにも取り組んでいきたいと考えています。今後もこの取り組みを、広く知っていただけるとうれしいです。
 

柔軟かつ前向きな、佐野市による「佐野らーめん予備校」の取り組み、かなり有意義なものだと思いました。今後、この「佐野らーめん予備校」出身者のお店がさらに増え、おおいに盛り上がっていくことに期待大です!


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