令和の怪物も「昭和の球審」には逆らえない? 佐々木朗希 vs 白井球審の何が問題だったのか

ロッテの佐々木朗希選手が試合中、白井球審に詰め寄られたシーンがテレビ中継されて賛否を巻き起こす話題になっています。何が問題だったのか、公式野球規則やリクエスト制度、他の選手や審判の声について調べてみました。

4月24日のオリックス戦で、ロッテの佐々木朗希選手に白井一行球審が険しい表情で詰め寄るシーンがテレビ中継され、ニュースやSNSで話題になっています。

 

佐々木朗希選手(画像は千葉ロッテ公式ホームページより)

 

威嚇にも見える「詰め寄り」に賛否

2回裏でツーアウト1塁、ストライクが決まればチェンジという場面で、佐々木投手が投げた球がボールの判定となり、同時にランナーが2塁へ盗塁。松川捕手が送球するも盗塁は成功。佐々木選手は表情を崩して、ホームへ少し歩きました。


そこで白井球審が、おもむろにマウンドにいる佐々木選手に詰め寄り、それを松川捕手らがなだめるという、実況や解説もざわめくようなシーンがテレビ中継されました。


プロ野球ではよくあることですが、今回は佐々木選手が2週間前に史上最年少の完全試合を達成して注目が集まっていたこと、そして白井球審の詰め寄る表情やしぐさが威嚇にも見えるような険しいものだったこともあり、映像はSNSでも拡散されて大きな話題に。


しかし試合後、白井球審は「話すようなことはありません。一切、コメントはしないです」と説明を拒否。余計に物議を醸すことになりました。


そこで今回は、何が問題だったのか、何がそこまで白井球審を怒らせたのか。公式野球規則やリクエスト制度、他の選手や審判の声について調べてみました。

 

ホームに向かって歩いたのが引き金だった?

試合の映像を見返してみると、問題のシーンより前から、佐々木選手が白井球審の判定に対して何度か苦笑いを浮かべており、これが「警告材料」として蓄積していたと思われます。


そんな中、問題のシーンで佐々木選手は苦笑いだけでなく、ホーム側に数歩、歩み寄っていて、これが引き金になったと考えられます。


ルールブックでは「ボール、ストライクの判定について異議を唱えるためにプレーヤーが守備位置または塁を離れることは許されない。もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向かってスタートすれば、警告が発せられる(公式野球規則 8.02より)」とされています。


コメントしていないので定かではありませんが、白井球審は「異議を唱えるために本塁に向かってスタートしたから警告」と判断したのかもしれません。


ただ、さらに映像を見返すと、ホームへ歩いたときの佐々木選手の表情は異議というより、松川捕手に対しての「ストライクだと思ったから、2塁への送球を避けなくて悪かった」という意味合いに見えます。実際、佐々木選手はすぐに2塁側へ振り返っています。


しかし、白井球審は「次、何かやったら即行ったるからな」という状態だったので、その行動を異議だと誤解してしまったのではないでしょうか。

 

ストライクかどうかにビデオ判定は使えない

「そんな揉めるならビデオ判定すればいいのに」と思った方もいるでしょう。しかし、アウト・セーフの判定などにビデオでのリプレイ確認を要求できる「リクエスト制度」は、ボール・ストライクの判定には使えません。


そもそもストライクゾーンは、公式野球規則において「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間」「このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべき」と、打者の姿勢によってリアルタイムで変化する複雑な3次元空間として定義されています。
 

ストライクゾーン(画像はイメージ)


「今日のストライクゾーンは狭いですね」といった実況がまかり通るような、試合ごとの違いが生まれてしまう曖昧なものであり、ゆえに球審の判定が最終決定とされています。これはメジャーリーグでも同様です。


今回の騒動で「いっそAI審判にしたらいいのに」といった声も上がっていますが、すぐに置き換えるのは難しいでしょう。


ただ、メジャーリーグでも同様の騒動は度々起こっており、弾道測定機器を用いた「ロボット審判」が、ひとつ下の3Aリーグで今季から運用されています。


いつかは日本のプロ野球でも導入される日が来るかもしれません。

 

判定以前に「警告の仕方」を改正すべきでは?

騒動を受けて出された他の選手や審判のコメントも、そのような難しい判定を担う白井球審を擁護するものも見られました。ただ、中には少し違和感を感じるものも。


元プロ野球選手のデーブ大久保さんは自身のYouTubeチャンネルで「(白井球審は)昭和の審判です」「叩き上げられた中の一人なんでね」「昭和初期の審判だったら(佐々木選手の行動は)退場ですよ」とコメント。


また、日本野球機構の元審判部副部長である五十嵐洋一さんはインタビュー記事で「私が現役でやっていたころなんて、しょっちゅうありましたよ」「あんまり頭にきたときには『次にど真ん中投げてきてもボールにしてやろう』と思ったこともあります」「白井くんにはそんな昔ならではの審判気質が残っているのかもしれませんね」とコメント。


「昭和なら当たり前だしもっとひどい。令和のあなた方は騒ぎすぎ」と言わんばかりです。コメントしていないので定かではありませんが、もしかしたら白井球審も同じような気持ちかもしれません。


ですが、本当にそれでいいのでしょうか? 昭和だろうが令和だろうが、権力を乱用して報復判定をしたり、怒りに任せて威嚇したりする審判なんて見たくない、冷静に毅然(きぜん)とした態度でいてほしいと思うのが、ファン心理なのではないでしょうか。


ロボット審判やビデオ判定の前に、警告の仕方を改正してほしい……!
 

いずれにしても、佐々木朗希選手にはますますの活躍を期待したいですね。


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