京都アニメーションが制作し、世界中で話題になったテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。幼い頃から感情を持たない軍人として生きてきた少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、終戦後、相手の想いをすくい上げて手紙を代筆する「自動手記人形」という仕事を通して"愛"を知るまでを描いた物語です。
アニメファンの間でも傑作と名高い本作を、石立太一監督による完全監修の元で再構築した「金曜ロードショー特別編集版」が10月29日(金)に放送され、ツイッター上では#ヴァイオレット・エヴァーガーデンが世界トレンド1位を獲得するなど盛り上がりを見せました。さらに今週11月5日(金)には、劇場公開された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形―』が本編ノーカットで地上波初放送されます。
金曜ロードショーで、他局で放送されたアニメを再編集して放送するのは異例のこと。そこで今回は、金曜ロードショーのプロデューサーである北條伸樹さんに、インタビューを敢行!『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』放送の経緯や裏話について伺った前編に続いて、後編では最近の金曜ロードショーの新しい取り組みについて伺いました。【前編を読む】
――今回の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』もそうですが、最近の金曜ロードショーは『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』 や『パラサイト 半地下の家族』など、攻めたラインナップが放送されてSNSでも話題になっています。作品を決める上で、心がけていることなどはありますか
最近では様々な動画配信サービスで映画を観ている方も多いですが、それだと自分の好きなものばかりで、どうしても観る範囲が狭くなってしまうと思います。
そんな人たちに、たまたまテレビで観て「こんな面白い映画があるんだ」と気づいてもらう。そんな新しい作品との出会いを提供することも、現在では地上波ゴールデンタイム唯一の映画枠となった金曜ロードショーの意義だと思っています。
また、今まで金曜ロードショーは、基本的には劇場公開された映画を主に放送してきましたが、今後はそれに限らず、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のように、話題になっている作品や、クオリティの高い作品、金曜ロードショーで観てもらいたいと思った作品も放送していきたいと思っています。
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――コロナ禍で、視聴者の反応や作品選びで以前と変わったことはありますか?
やはり「殺伐としたものはあまり観たくない」という気持ちが、視聴率にも現れているように感じます。作品の傾向として、ハッピーなもの、笑えるもの、楽しく観れるものがより好まれるようになっている。なので、なるべくそういった作品を優先して放送するようにしています。
そういう意味では、2021年のお正月明けに放送した『パラサイト 半地下の家族』は、正直コロナ禍じゃなければもっと観てもらえたかもな、と思ったりします(笑)。
――『パラサイト 半地下の家族』などの話題作は、数年前から放送が決まっているのでしょうか
直前に購入するものもあるんですが、1年先、2年先に購入するものもあります。私も4年半前に担当になったのですが、かなり先までラインナップが決まっていたので驚きました。
現在では、私を含めた担当プロデューサー3人で相談したものを私が統括して、上司の許可が通れば購入という感じです。今ですと、来年の春から、その先の夏・秋くらいまでのラインナップをどうしようかと考えている感じですね。
――作品選びにAIを導入されていると聞きました。どのように利用しているのでしょうか
AIを使って「予測視聴率」を出しています。開発に8か月ほどかけて、2020年の4月から運用しています。興行収入やレビューの点数やコメント、過去の放送実績など様々なデータから算出するもので、作品を選定・購入する際のひとつの指標としています。
劇場公開作品に限られるので、今回の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のテレビシリーズは対象外ですが、外伝の方の指標は算出して参考にしました。
――作品選びのほかに、新しい取り組みがあれば教えてください
ここ数年ですと、力を入れているのはSNSですね。金曜ロードショーの公式Twitterは、日テレの各番組の公式アカウントの中でも最多の64万の方にフォロー頂いています。映画の情報を細かくアップデートするだけでなく、最近ではテレビで映画を観ながらSNSで感想を共有するという人も多いので、放送中も映画の名シーンや裏話などを担当プロデューサーが分刻みで投稿しています。放送中にトレンドにあがれば、それが気づきになって観てくれる人も増えるかもしれません。
また、ホームページでも「金曜ロードシアター」という施策をやっています。放送を観ながら「笑いボタン」や「泣きボタン」を押すことで簡単に感想を送ったり、コメントを書くこともできます。日本中でリアルタイムに同じ映画を観ながら感動を共有できるというのも金曜ロードショーの意義だと思いますので、その助けになればと思っています。
また、視聴者から観たい映画のリクエストを受け付ける「金曜リクエストロードショー」も定期的に実施していて、基本的には数字としても良い反響を頂いています。『タイタニック』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『天使にラブソングを…』は特に視聴率も高かったです。
――金曜リクエストロードショーは、昔の名作にリクエストが集まることが多いのでしょうか
そうですね。おそらく「新しい作品はわざわざリクエストしなくても放送するだろう」と思って頂いてるんだと思います。あとは、定期的に放送しているジブリやコナン、ディズニー作品なども、そういった意味でリクエストから外れているのかもしれません。
――今後、チャレンジしたいと思っている取り組みや企画などはありますか
『パラサイト 半地下の家族』を放送する際、神木隆之介さんに吹き替えをお願いしましたが、ああいった「番組オリジナル吹き替え」は今後もやりたいと思っています。昔は当たり前だったんですが、今は予算の関係もあって、わざわざテレビ用に吹き替えは作らなくなっていますので。
古い作品に光をあてて、旬な俳優さん・声優さんに声をあてて頂く。そんなレアバージョンの吹き替え版を作るチャレンジを、年1回くらいのペースでやっていけたらなと思っています。
あとは、劇場公開されてないような知られざる名作を、発掘して放送することはやっていきたいと思っています。
――北條さん自身は、新たな作品を発掘するとき、動画配信サービスを使ったりもするのでしょうか
映画館で観ることが多いですね。超映画マニアの人には敵いませんが、金曜ロードショーに縁がありそうな作品は、なるべく劇場に足を運ぶようにしています。どんな客層のお客さんが来ているか、どんなリアクションをするのかというのも、作品選びの参考になっています。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』 は渋谷の映画館で観ました。場所柄なのか女子高生がたくさん観に来ていて、私はその中で浮きまくってたんですけど(笑)。その女子高生たちのリアクションが、すごく良かったんです。
キャーって叫んだ後に、みんな笑うんですよね。アトラクション感覚で観ているというか、すごく盛り上がっていて。そういった感触を得られたことも『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』を選んだ理由のひとつです。
――ありがとうございます。最後に、今後の金曜ロードショーの注目作品を教えて頂けますか
今お話しできる範囲だと、『アナと雪の女王』の1・2を11月12日(金)と11月19日(金)に放送します。注目はテレビ初放送となる2の方ですが、やはり1と続けて観た方が楽しめるので2週連続放送にしました。
また、ハリーポッターの映画公開20周年ということで、物語のターニングポイントとなったシリーズ第4作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』と第5作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』を11月19日(金)と11月26日(金)に、こちらも2週連続で放送します。
そして、年末のラインナップはまだ言えないんですが「クリスマスといったらこれ!」という作品を予定しています。ぜひリアルタイムで観て、感想を共有して頂けたらと思います。
――それは楽しみです! 本日はありがとうございました
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