「AIの開発競争は、このまま続けていいのか」——。Anthropicのダリオ・アモデイCEOが最先端AIの能力向上を緩めるよう提言し、OpenAIのサム・アルトマンCEOやイーロン・マスク氏も賛意を示しました。
一方、働く人にとって切実なのが、「自分の仕事をAIに奪われるのでは」という不安です。しかもAIは仕事を代替するだけでなく、実力がなくても“できたように見せる”力を持っています。文章も資料も瞬時に整う今、人の能力は何をもって判断されるのでしょうか。
心療内科医・産業医の海原純子さんと、ITコンサルタントのラスカウスキー照美さんの共著『AIに心を預けて大丈夫か 相談・恋愛・ビジネス・教育から見えてきた人間の未来』(飛鳥新社)から一部抜粋し、AIに代替されやすい作業と、「仕事ができる」と錯覚することの危うさを紹介します。
※本記事で紹介している商品の購入やサービスの利用により、売上の一部がオールアバウトに還元されることがあります。
AI時代、「仕事ができる人」は何が違うのか
AIを使えば、誰でもそれなりの答えにたどり着ける時代になった。文章は整い、資料は一瞬でまとまり、提案書も形になる。
ではそのとき、「仕事ができる人」とは誰のことを指すのだろうか。かつては、知識を多く持つ人、処理が速い人、ミスが少ない人が評価された。しかし今、その多くはAIが代替しつつある。
問題は、「能力の定義そのもの」が変わり始めていることである。
近年、ホワイトカラーの仕事がなくなるのではないか、という議論が急速に広がっている。
たとえば2023年のMcKinsey & Companyの分析では、生成AIは現在の仕事の最大30%の作業時間を自動化し得るとされている。さらに2025年4月『フォーブス』誌では、仕事の60%がAIによって大きく変化する可能性も指摘されている。
つまり、仕事そのものが消えるというより、「仕事の中身」が大きく変わるということである。
ホワイトカラー職の半分が消える可能性も?
一方で、より刺激的な予測もある。
最近の海外報道では、AI企業のトップが「エントリーレベルのホワイトカラー職の半分が消える可能性」に言及し、2026年4月Business Insiderでは、“white-collar bloodbath”(ホワイトカラーの大量消失)という言葉まで使われた。
また、企業現場でも変化はすでに起きている。ある企業では、AI導入によりマーケティング部門が17人から2人に縮小したという報告もある。
さらにMichigan Journal of Economicsによると、金融業界でも、AIの進展によって今後採用を減らすという発言がトップから出ている。
これらを並べると、「ホワイトカラーは不要になるのではないか」という不安が現実味を帯びるのも無理はない。私が産業医をしている現場でも、働き盛りの年代の事務職の人たちの不安の声を聞くことが増えた。
テレビの報道で、ブルーカラーになって収入が倍増したという人のインタビューもあり、ホワイトカラーの持つエリートのイメージが変化している。



