早稲田大学の指定校推薦を選ばず、一般選抜と東京科学大学の「女子枠」の両方に挑んで合格を果たしたカンダさん(仮名)。
しかし、合格後のSNSでの「逆差別」批判や、入学直後に大学教授から投げ掛けられた無神経な言葉に、複雑な思いを抱えることになります。正当な入試を経て入学した彼女が、キャンパスで直面したさらなる苦悩に迫ります。
高校生に「女子枠」を勧められない理由
理工系クラスの女子はおよそ1割。「周りの男子は優しい」とカンダさんは言いますが、女子が少ないことはやはり楽しくないと思いました。高校時代の部活でやっていたことを続けたいと思い、関連するサークルに入りましたが、そこには女子大の学生が多く在籍していました。
「女の子の友達ができてうれしいな」と思い、女子大の学生と最初はうまく付き合っていましたが、彼女たちの会話を聞くうちに違和感が募りました。
「東大でそこそこの男子と付き合うのは競争が激しいけど、東京科学大学の理工は人気ないから、割といい男子と付き合えると聞いた。だからこっち(のサークル)にきた」
この会話を聞いた後、カンダさんは、サークルに顔を出さなくなりました。
「男子のうわさ話が会話の中心でついていけなくて。勉強のことも将来のことも、そこでは話題にならなくて。楽しいキャンパスライフのはずなのに、正直、思っていたのと違うなと感じました」
サークルに行かなくなった分、塾講師のバイトに力を入れるようになりましたが、生徒から女子枠入試について質問されると言葉を濁すといいます。
「塾や高校からしたら東京科学大学の合格実績はほしいものだと分かります。でも、女子にとってこの大学が居心地いいとは思えないんですよね」
「女子枠!」と呼び掛けられ……
ある日、カンダさんは同じ理工系の女子学生2人とキャンパス内を歩いていました。授業と授業の合間なので学生でごった返しています。カンダさんは友達といま終わった授業の課題について話していて、普段通りの風景でした。「本当に何気ない時間だったんです。愚痴を言い合ったり、次の試験の話をしたり。周りに男子学生もたくさんいましたが、気にするようなことでもなかったので」
そんな時に、後ろからこう声をかけられたそうです。
「女子枠!」
その瞬間、カンダさんの体が固まりました。
振り向いても、周囲を歩く男子学生のなかで誰が発した言葉なのかは分かりません。声だけが背中に残り、足を止めることもできずに、そのまま歩き続けたといいます。
「一瞬、聞き間違いかと思いました。でも、確かに女子枠と言ったんです。からかうつもりだったのでしょう。体温がすっと下がるような感じがして。何も言い返せませんでした」
幸い、一緒にいた女子達は「女子枠」と言われたことに気付かなかったようです。
そして、こう続けます。
「私は勉強して、難しい試験に合格して入学しているのに、こんな形で批判されるのは筋違いだと感じます」
とはいえ、カンダさん自身、一般選抜で受かっていたかは微妙だと言います。
「東京科学大の理工の二次の数学は本当に難しいし、配点も高いので。一般選抜で入学した女子とも仲良しですが、彼女たちの数学力は私よりワンランク上ですね」
そして、一般選抜で入学した女子たちも居心地の悪さをこぼすことがあるそうです。
「一般選抜で入学しても女子は女子枠だと批判されがちですからね。女子学生の3分の2が女子枠ですから、彼女たちはマイノリティ意識もあると思います」



