7月以降は夏休み・お盆の繁忙期を迎える。ANAの利用者からは「安い運賃だったので事前座席指定ができず、家族で席がバラバラになった」「オーバーブッキング(過剰予約)で予約便に乗れなかった」といった声も上がっており、ネット上では「本当に利用して大丈夫なのか」という不安が広がっている。
ANA国内線の最安運賃は、子連れでも事前座席指定不可
今起きているトラブルの最大の要因は、2026年5月19日から導入された新運賃と新システムだ。これまで複数あった運賃が、主に「シンプル」「スタンダード」「フレックス」の3種類に整理された。
小さな子どもや介護が必要な高齢の親がいる家族は座席が離れ離れになると困るものだが、そういった事情への配慮はない。事前に座席指定したければスタンダード以上を選ぶ必要があり、LCC(格安航空会社)のような「座席指定のみ有料」というオプションも存在しない。
オンラインチェックインで並び席が確保できなければ空港カウンターで交渉するしかないが、繁忙期は満席の可能性が高い。最終手段は機内で乗客同士の交渉となるが、「高いスタンダードを買って座席指定したのに……」という人に頼むのは気が引ける。加えて、飛行機は座席ごとに氏名・年齢が登録されているため、客室乗務員の許可なく座席を移動することは認められていない。
告知がなかった約款改定
事前座席指定とは別に、シンプル運賃で「もう1つのトラブル」が起きている。出発24時間前のオンラインチェックインができず、空港に行くとオーバーブッキングを理由に振替便を提示されたというケースだ。しかもその振替便を断ると「キャンセル扱い」となり、航空券を買い直す羽目になったという。 5月19日に改定されたANAの国内線「国内旅客運送約款(現・旅客手荷物運送約款)」第14条(旅客都合以外による変更/払戻)には、以下のように記載がある。飛行機の便は、乗らない客が一定数いることを前提に座席数以上を販売するのが業界の慣例だ。従来のANAや他社でも、オーバーブッキングになった場合、搭乗ゲート前でボードを掲示して協力者を募る対応などが一般的だった。第14条(旅客都合以外による変更/払戻)
(D)(オーバーセールス等による搭乗制限)
「搭乗を取りやめる者が十分でない場合は、会社の定める搭乗優先順位に基づき、会社は旅客の搭乗をお断りする場合があります」
しかしこの約款の文面だけを読むと、“会社の定める搭乗優先順位に基づき”という文言が、「高い運賃の乗客が優先され、安い運賃の乗客は乗れないかもしれないのでは…...」と不安にならないとは言えない。約款に記載されているとはいえ、事前に目を通してから購入する人はまれだろう。
サポート電話が混雑、メール回答「最大2カ月待ち」
空港での混乱に加え、電話での問い合わせも急増している。ANAは6月10日にようやく公式Webサイトで「お問い合わせ窓口(電話・メール)の混雑・よくあるお問い合わせについて」を告知した。
メールの回答については現在「返信まで2週間から2カ月ほどお時間を要する場合」があるとされており、旅行日程に間に合わないばかりか、公共インフラを担う企業としての機能が問われる状態にある。
飛行機利用の国内旅行、不安をどう減らす?
ANAを「大手だから安心」と選択してきた人にとって、これらの状況は不安以外の何物でもないかもしれない。加えて、先に発表された自社の上級会員制度「スーパーフライヤーズカード(SFC)」の事実上の「改悪」や、株主優待の国内線がシンプル運賃5%引きのみなのは「渋すぎる」との批判もある。
すでにシンプル運賃を購入して不安を感じているなら、キャンセル料はかかるもののスタンダード運賃への変更、もしくは別の航空会社への乗り換えを検討する価値はある。ただ、新システムの不具合は当初より改善されてきていることから、もう少し様子を見るという判断もあるだろう。
これから航空券を購入しようとする人の場合は、ANAへの不安がぬぐえないならJALやスカイマークなら「最安運賃でも事前座席指定無料」だ。LCCも座席指定のみ有料で選べる。
航空会社の選択肢を広げることで旅行への不安はかなり小さくなるだろう。
この記事の執筆者:
シカマ アキ
飛行機の旅 ガイド
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。
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