ところが減便の裏には、利用客が知っておきたい「もう1つの理由」がある。今、航空業界で何が起きているのか、そして私たちはどう自衛すべきなのか。現状と対策を解説する。
燃油サーチャージ高騰で欧米往復は10万円超に
2026年2月28日に米軍とイスラエル軍がイランへの攻撃を開始して以降、ジェット燃料の価格は1カ月で約2.5倍という異例の急騰を記録した。通常、航空会社は燃料の先物取引(ヘッジ)で価格変動のリスクを分散しているが、今回は対応が追いつかず、各社とも航空運賃に上乗せされる燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を軒並み値上げしている。
日系大手のANAとJALは、通常2カ月ごとに燃油サーチャージの金額を見直しているが、今回の急激な燃油高を受け、4月に改定した直後に5月発券分からさらなる大幅値上げを行っている。
5月1日以降の発券分に適用される燃油サーチャージを確認すると、欧米便は往復で10万円超になる。 また、今まで課されていなかった国内線にも燃油サーチャージ導入の動きが広がりつつある。スカイマーク、JAL、ANAなどは2027年頃以降の導入検討を報じられており、もはや「近場なら安心」と言える状況でもない。
地域航空会社のフジドリームエアラインズ(FDA)では既に国内線で導入済みで、2026年5月発券分は最大4倍に値上げされた。
「燃料不足」ではなく「赤字回避」で減便も
ジェット燃料の供給が不足すれば、航空機を運航することはできない。しかし、現状では燃料そのものが足りないわけではないことも。ジェット燃料の価格が高騰したことで運航コストが跳ね上がり、「飛ばせば飛ばすほど赤字」になる。そのため、採算が合わない便を意図的に間引いているというのが実態もある。特にヨーロッパ路線は、陸路交通(鉄道やバス)が発達しているうえ、ライアンエアーやイージージェットなどの格安航空会社(LCC)の便も多く、激しい価格競争にさらされている。
世界中に広がる「減便ドミノ」の衝撃
日本路線も例外ではない。LCCのタイ・エアアジアXは、日本路線を含む運航便の一部を欠航することを発表した。そのほか、ベトナム航空や韓国の航空会社、ニュージーランド航空などでも同様の動きが見られ、今後世界中に広がる可能性がある。
恐ろしいのは、これらが「情勢悪化による一時的な運休」ではなく、コスト増に耐えかねた「戦略的な撤退」である点だ。今後、日本国内では夏休みやシルバーウィークが控えているが、イラン情勢沈静化の見通しが立たない状況では、航空運賃や燃油サーチャージのさらなる上昇と、それに伴う「サイレント減便」が広がる懸念は極めて高い。
「突然の欠航時はどうする?」今からできる自衛策
1. 「公式Webサイト」での直接予約を徹底
今後、出張や旅行で航空券を予約する場合は、航空会社の公式Webサイトで直接購入するのが望ましい。欠航・変更などの非常時においては特に、旅行代理店経由や各種予約サイト経由の場合は手続きが複雑化し、“二度手間”が発生する可能性もある。その点、公式Webサイトで購入していれば、返金処理に際しても手数料が差し引かれたり、返金自体が遅れるなどのトラブルも回避できる。
2. ホテルは「直前までキャンセル無料」を死守
欠航になった場合、代替便の確保は「早い者勝ち」になる。仮に航空券の変更が効かず旅行自体をキャンセルすることになっても、「(出発直前まで)キャンセル無料」プランで予約すればホテル代のキャンセル料が発生しない。最近はホテル予約サイトの表示が複雑化しているため、旅慣れた人でも分かりにくい場合がある。「キャンセル無料」と表示されていても、実際は宿泊10日前や1週間前になるとキャンセル料が発生することもあるため、確実にトラブルを避けたい場合は、やはりホテルの公式Webサイトからの直接予約が安心だ。
3. 予約便のステータスを「自分で」確認しに行く
すでに購入済みの航空券は、欠航や変更になっていないか航空会社のマイページでこまめにステータスを確認することが大切だ。欠航となった場合、キャンセル・変更不可の運賃でも全額返金が認められるケースや、追加料金はかかるが日程変更が可能になる場合もある。この変更手続きは「早い者勝ち」のため、減便が激しい現在は、素早く異変に気付けるかどうかが代替便確保の分かれ目になる。
採算が悪い路線から減便する最近の傾向を「コロナ禍の時と似た状況になっている」と言う業界関係者もいる。情勢が落ち着くまでは、「安さ」よりも「確実性」や「安心感」を優先した旅支度を徹底したい。
この記事の執筆者:
シカマ アキ
飛行機の旅 ガイド
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。
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