都から「辞めないで」と懇願されるも補助金はギリギリ…夜間働く親たちの“最後の砦”が直面する危機

「夜に子どもを預けるなんてかわいそう」……そんな冷ややかな世論に隠された、夜間保育を必要とする親たちの切実な現実。批判を浴びながらも20年間現場を守り続ける施設長の葛藤と、社会が目を背ける「制度のひずみ」とは?

就寝前、保育士による絵本の読み聞かせを真剣に聞く子どもたち
就寝前、保育士による絵本の読み聞かせを真剣に聞く子どもたち(筆者撮影)

夜の10時から朝まで子どもを預かる保育園があります。「夜間保育」と呼ばれていて、対象は0歳児から5歳児です。

「夜に施設に預けられるなんて、子どもがかわいそう」「親の勝手だ」——そんな感想を持たれる方も少なくないかもしれません。保護者に非難の目を向け、夜間保育を行う施設にすら冷たい視線を向ける。それが、いまの社会の「常識」なのかもしれません。

しかし、そうした保育を必要としている保護者がいて、夜の居場所を必要としている子どもたちがいるのは厳然たる事実です。私たちは、この現実から目を背け続けていいのでしょうか。

「育児放棄を助長する」という批判のなかで

夜間保育を実施するドリーム
夜間保育を実施する「キッズスペースドリーム」(筆者撮影)

東京都八王子市にある「キッズスペースドリーム」(以下、ドリーム)は、東京都の「認証保育園」として夜間保育を実施している、地域で唯一の存在です。

ここで一度、保育園の分類を整理しておきます。私たちが夜間保育の現状を考えるうえで、この「制度の壁」が大きな意味を持ってくるからです。

認可保育所:国が定めた設置基準をクリアし、都道府県知事が認可したもの。

認証保育所:東京都が独自の基準で認可した保育園(ドリームはこちらに該当)。都の補助があるため、保護者の金銭的負担はほぼ増えない。

無認可保育園:国や自治体からの公的補助が少なく、利用する場合は月数万円以上の大きな経済的負担が必要となる。

ドリームが夜間保育を行っていることに対して、世間の風当たりは決して優しいものではありません。施設長を務める野村幸加さんは、このように話します。

「夜間保育を始めた当初は、ほかの保育園から『夜間保育は育児放棄を助長することになる』と批判されたこともありました」

夜も預かる場所があるから、それを頼りにして親が子どもを放っておくようになる、という理屈です。

「夜は子どもは親といるべき」「自分の家で眠るべき」という固定観念から見れば、そう映るのかもしれません。しかし、野村さんはこう続けます。

「そういう考えも理解できます。しかし、目の前に夜間保育を必要としている子がいることも事実です。私たちが夜間保育をやらなければ、そういう子たちは行き場所がなくなってしまいます」

批判する側は、夜間保育を必要とする親子の存在に目をつむっていれば「かわいそうだ」と言っているだけで済みます。しかし、ドリームは目の前の子どもたちから目をつぶりませんでした。

事務所で寝ている子を見かねて始まった

ドリームが夜間保育を始めたのは20年前の2006年のこと。当時の八王子は飲食店街が非常ににぎわっており、そこで働く子育て中の女性も少なくありませんでした。

自宅で母親の帰りを待つことができず、飲食店の事務所の片隅で寝かされている子どもたち——。その姿を見かねたドリームの前オーナーが始めたのが、夜間保育の原点でした。

当時は40人もの子どもを預かっていましたが、現在在籍している子は8人です。景気の変化によって飲食店の数が減り、働く場自体が少なくなっている影響もあります。

「それなら昼間の仕事に転職して、夜は子どもと過ごせばいいではないか」という意見もあるでしょう。そうした見方に、野村さんは現場のリアルを語ります。

「シングルマザーも多いので、生活のことを考えると、昼間にパートで働くより収入のよい夜の仕事を選ばざるを得ないという現実があります。そして、どうしても昼の仕事の肌が合わないという人がいることも事実です」

では、夜間に子どもを預ける保護者は無責任なのでしょうか。野村さんいわく、この20年で「保護者の意識も変わってきた」と言います。

「それこそ20年前は、2日も3日も子どもを預けたままで連絡もしてこない保護者がいたこともありました。しかし現在は、そういう保護者は皆無です」

もちろん、仕事終わりに2〜3時間だけ仮眠をとってお迎えに来る親が、疲労のあまり寝過ごしてしまうといった例外はあります。しかし、それは毎回ではありません。親たちも必死に仕事と育児を両立しようとしています。

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尽くし続けた末の悲劇。夜間保育の現場が「一線」を引くことになった痛烈な事件
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